爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「滅亡へのカウントダウン 人口大爆発とわれわれの未来 下」アラン・ワイズマン著

欧米の科学関係の本は非常に細かく描写され、エピソードが多すぎるほど連続するために、この本のように上下巻やそれ以上の複数巻の場合は最初の上巻だけでもう十分と言う感覚になることが多いのですが、この本の場合は下巻に「日本」の部が含まれていたために、無理して?読み続けました。

まあ、下巻の方がより詳しく人類の人口爆発の危機について解説されていたので、まあ読んで良かったのかも。

 

下巻の冒頭、第三部もやはりまだ人口急増が続けられているパキスタンの描写から始まります。

さらに宗教と政治の状況次第で人口制限が左右されるイランについても語られますが、どちらも乾燥地域で人口増加した場合に水の確保が大きな課題となるという点では同様です。

そしてそれが著者がもっとも主張したかった全世界的な課題であるということです。

 

そして著者の全世界をめぐり人口問題を調査する旅は日本に向かいます。

世界で最も早く人口減少に進み始めた日本ですが、それにきちんと対応できているとは言えず、無駄に見える努力をしているようです。

労働力不足がやってくるのは確実ですが、他の国なら始めている移民受け入れは日本では選択肢に入っていません。

その原因が日本人の外国人嫌いにあるということも正確に指摘しています。

「人間は成長なしに繫栄できるだろうか」という大きな問題を解決できるかどうか。

日本は否応なくそれを試みなければならない最初の近代社会になるだろうとされています。

松谷明彦、金子勝隈研吾などなど、多くの人々に面談し取材したと謝辞が書かれています。

 

世界全体を巻き込むグローバル経済化が急速に進みました。

しかしこれは、「もはや拡大の余地がなくなった」という意味であることを考えていない人が多いようです。

埋蔵資源が少なくなると、これまでは放っておかれていた岩盤の奥深くのガス、砂やシェールから絞り出す原油北極海の鉱床まで手を付けて(そして汚染を拡大し)いますが、これで得られる時間はそれほど多くはないようです。

 

食糧生産が増える人口を賄いきれずに大規模な飢餓と餓死が訪れるかと思われた時に、「緑の革命」と称する画期的な食糧増産が実施されました。

しかし、その結果どうなったかというとその増産した食糧を使ってさらに人口が増えました。

結局はこの先あるかもしれない食糧危機の際の悲劇の大きさを拡大しただけです。

著者が考えている最大の危機はやはり淡水の使用可能量の問題です。

多くの地域ですでに水不足が深刻化しており解決の道は見つかっていません。

これがさらに気候変動で拡大していけば食糧生産も滞り破滅的な事にもなり兼ねません。

その際に、「生きている人間を間引く」ようなことをしなければならなくなる悲劇を避けるためにも、即刻全世界で厳格な出産制限を始めるべきです。

まだまだ宗教や社会の伝統のために多くの子どもを産んでいる地域が数多くあります。

そのような地域から自滅の動きが出るのでしょうが、その悲劇が全世界に広がることがないようにすべきでしょう。