最初の「長いプロローグ」というものを養老さんが書かれており、そこでは「教育論」というものが扱われています。
その後は、養老さんと藻谷さんの対談で進行していきますが、話題は必ずしも教育論のみに留まらず、社会情勢や人の生き方まであちこちに飛び回ることになってしまいました。
養老さんは解剖学者でありながら、「バカの壁」などの著作で有名な方ですし、藻谷さんは日本開発銀行勤務を経て現在は地域エコノミストとして活躍されています。
お二人の対談はあまり編集されているようにも見えず延々と続いていきます。
気になった事柄に触れておきます。
養老さんが書かれている部分ですが、「情報はすべて過去のこと」とあります。
現代は情報化社会と言われていますが、情報というのは基本的にはすべて過去のものです。もう済んでしまったことなのです。
済んでしまったことに取り巻かれて肝心のことを先送りしているのが現代人です。
石油など化石燃料が減っていくのは間違いのないことです。
今、石油が無くなったとしたら東京は絶対にもたない。車が走れず流通も生活が成り立たない。石油が無くなる前に計画的に地方に分散することが必要であり、そこに日本人の本気度が問われる。
地下鉄サリン事件の実行犯だった林郁夫は慶応病院の医師でした。
それが交通事故の加害者となったことでオウム真理教に入信し結局サリン事件を実行しました。
それが、刑務所の中で本を書いたそうです。医者が大量殺人犯になるのは大変な心境の変化があるはずと思い、養老さんは買って読みました。
しかし、その内容は単に「反省しています」ということだけでした。
それで気付いたのは、これは近代日本ではないか。明治維新以降五大国として世界の模範生となりました。これは慶応大学を出て医師になった林郁夫ではないか。
いつの間にか事件に巻き込まれて大量殺人をしてしまった。それを戦後になったらけろりと忘れて「反省してます」
林郁夫は近代日本をそのまま体現しているようなものです。
林になぜこうなったのか聞いてもおそらく自分でうまく説明できないでしょう。日本も同様です。
いろいろ言いたい放題、時事放談のような本でしたがところどころに見るべき部分も見られるように思いました。