安倍首相は4カ国訪問であちこちで好き勝手なことを言っています。
おそらく、行った先々でチヤホヤされるのが楽しいのでしょう。
さて、その内容ですが、オーストラリア首相との会談ではTPPへの姿勢を堅持しトランプ新大統領へも説得の努力を続けるとか。
このいい格好したさに、成立の見込みもないのに国会での議決を急いだのでしょうが、果たしてどうでしょう。
それにしても「保護主義への動きに対抗し自由貿易体制を進め経済成長を促す」ことが絶対の善であり、それに反する動きは前時代の因習に囚われるものだというような主張が疑いも無いものとして語られています。
報道でもそれは暗黙の了解になっているようです。
果たして、そうでしょうか。
国内産業を守るために関税障壁や非関税措置を駆使して海外からの輸入品流入を防ぐというのが一昔前の各国の貿易政策の主流であり、それを打破することで世界経済の発展を促すというのが取るべき姿とされてきました。
EUの域内完全フリーや、アメリカとカナダ・メキシコなどとの二国間自由貿易協定、そしてTPPと進んできているのですが、ここに来てやはり昔とは状況が大きく変わってきているのではと感じます。
それは、「どこで作っても品質が保証される」ことです。
以前は高度な技術は先進国の専有物であり、途上国で作られるものは粗末なまがい物でした。
そのような状況であればいくら無関税で流入したとしても安物ばかりであり、先進国の国内生産物の牙城はなかなか崩れないものでした。
それがどこで作っても高品質、メキシコ産の車はアメリカ産よりもおそらく高品質でしょう。
中国産の加工食品などもごくまれに粗悪品があることもありますが、ほとんどのものは日本産に引けは取りません。
それでいていまだに残る労働者賃金の大差のために大幅に安く作ることができます。
本来ならば品質向上とともに労働者賃金も上昇していき、高品質製品が生まれる頃にはコスト面のメリットは無くなるはずなのでしょうが、それは抑えられたままです。
ここにあるのは何でしょう。それは各国の政府の統制をはるかに上回る世界企業の力の向上です。
世界企業は思いのままにもっとも安い労働力の地域で生産し世界中に製品を動かすことができるようになりました。
そこには国単位の政府の統制などはほとんど効果を及ぼしません。
この状況下で「自由貿易」を突き詰めると各国政府統制などはほとんど効力のない「世界企業統治の世界」になるだけです。
これに反対の声を上げたのがイギリスのEU離脱国民投票やアメリカのトランプ当選だったのではないでしょうか。
いくら世界経済が効率化し数字だけは成長しても、各国国民に収入が無くなれば不安定化が強まります。
トランプが実際に成功するかどうか(そもそもその気があるかも疑わしいですが)は怪しいものですが、国民の雇用を守るということがこれからの各国の取り組むべき課題であることは間違いないでしょう。
日本ももはや実体のない「景気回復」などという言葉でなく、国民に仕事を回すことを実際に実行できる政府というものを選択する必要がありそうです。