現在の日本の問題について、朝日新聞の編集委員、論説委員といった人たちが項目別に詳しく解説をしているものです。
まあ、朝日新聞をお嫌いの方も多いでしょうが、かと言って初めから捨ててしまうのももったいないというような内容でしょう。
問題点としては、政治・安全、経済、世界、(特に)アジア、と分類され、それぞれ5から10点程度の項目を挙げてあります。
論説委員の原真人氏が書いているアベノミクスについての項はなかなか優れたものです。
一言、「亡国の経済政策」と言っており、それは間違いないでしょう。
アベノミクス3本の矢ということが言われましたが、その2,3はこれまでもダラダラと続けられていたものに過ぎません。
その1の思い切った金融緩和というものが新たなものといえますが、これも実はこれまではタブーとされてきたものに手を付けただけのものです。
この施策で近い将来のリスクを大きくしてしまいました。
この異次元緩和というものは、実は論理的でも経験的でもないものです。いわば「期待」に訴えるだけの心理的なものでした。
輸入価格が円安で上昇したために物価が上昇したようにも見えましたが、あらゆる物価を総合的に示してみると消費者物価指数はほとんど上がらないままです。
そもそも政策の本当の目標は「景気を良くする」ことであり「物価を上げる」ことではないはずです。しかし、「物価を上げる」ことすらできないままです。
こういった政策を取っていても日本国債は一応安定しているように見えます。これは日銀が国債の買い支えに回っているためで、これが将来の大きなリスクになっているのは間違いありません。
それがさらに「財政規律」を弱めているということも言えます。どんどんと政府予算が膨張していきます。これも危険要素になります。
もう一つ興味深かったのは、「人工知能・ロボットは人類を滅ぼすか」という、論説委員の高橋万見子さんの項です。
工場などでのロボット化は以前から進んでいますが最近では接客まで行なうロボットというのが話題になっています。
この勢いが止まらなければ当然ながら雇用の消失につながることになります。
2013年にオックスフォード大学のカール・フレイ博士らが発表した論文では、702種の職種についてコンピュータに代替される確率を出したところ、10-20年後にはアメリカの労働者の47%が職を失うという結果が出ました。
その論文から引用した「なくなる仕事、残る仕事」という表によるとそれぞれ50種の仕事が挙げられていますが、例えば「なくなる仕事」の方では、不動産登記の審査、手縫いの仕立て屋、保険の審査業務、時計修理、証券会社の一般事務、車両を使う配達員、モデル、レジ係等となっています。
一方、「残る仕事」の方は医療関係、教育関係、その他かなり専門性のあり、かつ現在は資格が無ければできない仕事が多いようです。
他にもそこそこ興味深い記事がありました。これだけしっかりとした意見を持つ編集委員や論説委員を抱える朝日新聞がどうしてああなるのか、不思議な気もします。