安いということで有名な「鳥貴族」という店で、チューハイに消毒用アルコールを使ってしまい謝罪しました。
テレビのワイドショーでも報道されましたが、相変わらず「消毒用アルコールは糖蜜などを原料に作成」とかいった的外れ指摘でした。
糖蜜などを原料ということであれば、チューハイ用の甲類焼酎もまったく同様です。
さて、問題の事件は厨房に置いてあった消毒用に使っている「食品添加物消毒用アルコール」のボトルをチューハイサーバーに間違ってセットしてしまったようです。
甲類焼酎はよく似た18Lのダンボール箱入ペットに入っていたようですが、店のマニュアルに反してダン箱は捨ててしまったために見分けがつかなかったようです。
厨房にはダンボールは置かないというのはまともな対応なのですが、例外があるということが浸透していなかったのでしょう。
まず、種明かしですが、甲類焼酎も食添用アルコール消毒剤も、使われているアルコールはほとんど同じものです。
エチルアルコールは発酵法、および合成法で工業的に作られますが、飲料用または食添用に使えるのは発酵法によるものだけです。
発酵法の製造原料には糖質原料の糖蜜(製糖原料から作られる)やイモ・トウモロコシなどのでんぷん質原料が使われます。
糖蜜の方が糖化過程が不要ですので作りやすいのですが、原料供給の事情からでんぷん質原料を使わねばならない場合も多くあります。
しかし、どちらにしても発酵してできたモロミを連続蒸留装置で蒸留してほぼ100%の純度のエチルアルコールにしますので、出来たものはほとんど一緒です。
このエチルアルコールを甲類焼酎にする場合は水だけを加えてアルコール濃度25%(または35%・20%)にします。したがって、味の決め手は水とも言えます。
一方、食品添加物アルコール消毒剤にする場合は、適度な濃度に水で希釈するとともに、様々な副原料を加えます。こういった副原料には酢酸などを使いますが、どれも食品添加物として使えるものです。これらを加えることにより殺菌力を強めるということもありますが、一番の問題は酒として酒税をかけられないようにするということです。
なお、アルコール濃度は70%程度(体積比)が最も殺菌力が強いと言われていますが、(純粋アルコールよりも若干希釈したほうが強い)アルコール濃度が60重量%以上になると消防法上の危険物になりますので、取り扱いが面倒になります。それを避けるために若干殺菌力が落ちますが59%以下の濃度にした製品が多いようです。
今回の事件では客から味がおかしいというクレームが出たにも関わらずきちんと原因究明もせずに出し続けたとあります。
確かに副原料が入っているはずですので味は違いますが、それほど差があるかどうかは分かりません。おそらくアルコール濃度がかなり高かったのではないかと思います。
いずれにせよ、飲んでも健康に問題は無かったのは間違いないでしょう。
しかし、店の店員教育がまったく出来ていなかったのは間違いないことです。マニュアルに従って作るしか無く、しかもそのマニュアルを間違えていたようです。
そのような低レベル店員を安い給料で使わなければ、客に安く提供できないんでしょうが、危険なことには変わりありません。
今回は危険性はほぼ無かったとはいえ、次は何が起きるか危ないものです。