ジャーナリストの田原氏が「潮」誌上で2012年から2013年にかけて若手論客と対談したものを連載していたそうですが、その20人分を若干加筆してまとめたということです。
対談の相手は古市憲寿氏、萱野稔人氏、木村草太氏などの面々で、およそ年代は20代から40歳くらいまででしょうか。
まあこれだけ出てくると玉石混淆といったところです。
一人あたりのページ数が10ページほどですので、人によっては物足りない(人によってはそれでも飽きる)こともあります。
いつもの市立図書館ではなかなか新しい本が入りませんので、こういった若手の本は見ていないことが多いようです。
そのため、なかなか興味深いことを話している人も居ますがほぼ初耳でした。
萱野稔人さんは名前だけはどこかで聞いたことがありましたがなかなか面白い内容でした。
このブログでも何回か取り上げている水野和夫さんとも共著を出されているそうです。
経済成長というものが一つの区切りを迎えているという、まさしく妥当な認識をされています。
経済成長を人類が経験したのは19世紀からであり、それも化石燃料のエネルギー革命がもたらしたものだということは、私の見解と同じです。
今後は市場縮小が避けられずそれに対応するというこれまでになかった打開モデルを打ち立てなければならないという説でした。
土井香苗さんは、東大法学部3年で司法試験に合格したのですが、その後アフリカにボランティア活動で渡っている人です。帰国してから弁護士となりましたが、人権活動をされています。
日本政府の人権意識の乏しさというものは非常にはなはだしいそうです。
そこには、他国との問題を起こしたくないという官僚の事なかれ主義も関係していそうです。
哲学者の小川仁志さんも、経済成長に固執する方向性自体が問題と言っています。対談相手の田原総一朗が旧態依然の「景気が上向かなかったら何も始まらない」と言っていますが、それに対して経済縮小に対応した暮らしにシフトすべきという正論を述べています。
白井聡さんは「永続敗戦論」という本を出したそうです。
戦後の日本はアメリカに盲従していくということで、永続的に敗戦を続けているという意味だそうです。
中曽根や安倍は「戦後政治の総決算」とか「戦後レジームからの脱却」などということを掲げていますが、これを決して実行に移そうとはしません。
もしも「戦後からの脱却」を言うならアメリカの戦後対日政策を否定することで、アメリカに喧嘩を売るに等しいことであり、彼らのようにアメリカ盲従で権力を担ってきた連中にできるわけが無いからです。
実はこの本を図書館で借りると同じ時に、上記の小川仁志さんの「脱永続敗戦論」という本も借りてきました。刺激的な表題ですが、小川さんによれば別に白井さんの論議を否定したり批判したりするという意味ではなく、永続敗戦という言葉に触発されて色々考えたためにその題になったそうです。
そちらの書評はまた別に書きます。
まあ、若手でも年寄りでも聞くべきことを言っている人もいるし、聞く必要もないことを言うだけの人も居るということでしょうか。