爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「内田樹の研究室」より、「比較敗戦論のために」

内田樹さんは、「寺子屋ゼミ」という活動をやってらっしゃるということですが、今年は「比較敗戦論」というテーマを扱われるそうです。

これについて、姜尚中さんと対談したものが掲載されています。

blog.tatsuru.com

このテーマを取り上げようとしたのは、「永続敗戦論」という著書で話題となった白井聡さんと対談をしたときのことで、白井さんが日本の現状は第二次大戦に敗戦したという事実があるにもかかわらず、「敗戦の否認」というおかしな心理状態のまま戦後を続けてきたためであると主張しているのですが、それに対し内田さんは、「他の敗戦国はどうであったか」ということに心を惹かれたそうです。

 

「永続敗戦論」は読書履歴の中に入っていました。

sohujojo.hatenablog.com

ただし、内田さんと私の違うところはその豊富な知識であり、「他の敗戦国はどうであったか」と言うことに思い当たり、実際に調べるというのはさすがです。

 

まず最初に、第二次大戦の敗戦国としてはドイツ・イタリア・日本とするのが普通ですが、それ以外にも「フィンランドハンガリールーマニアブルガリア、タイ、これらは連合国が敵国として認定した国」というのは盲点でした。

確かに、三国同盟とは言いますがそれ以外にも同盟に協力した国はあったので、これを認識しておかなければ正確な判断はできないでしょう。

 

さらに、フランスなども本当に戦勝国か、イタリアは実は戦勝国ではないのかといった問いかけは歴史の詳細に通じなければなかなかできないことです。

 

それらの国では、ドイツに加担した国民も数多かったのですが、それに反し連合国側に協力したものも居た。

連合国が勝ったのでそれについた人々が正統となったのですが、国全体としてはどちらとも言いづらいものでしょう。

 

その他の三国同盟協力国なども、戦後は「あのことはなかったこと」と言う雰囲気が強かったようです。

どこでもまともに向き合って総括したということもされていません。

 

ドイツの戦後の総括が上手く行ったと言うこともよく言われます。

内田さんの立場はやはり「ナチスに全責任を負わせた」ということがドイツの復活を容易にしたという意見のようです。

ヴァイツゼッカー元大統領が、ヨーロッパ各国でドイツの戦争責任を謝罪していますが、それとともに彼は「ナチスが降伏した日」を「ドイツ国民解放の日」として祝福するという立場の人でした。

 

内田さんは自らを「愛国者」としています。

だからこそ、かつての日本としての蛮行をなかったことにしようとする「いわゆる愛国者」たちの行動を許せません。

僕は歴史修正主義という姿勢に対しては非常に批判的なのですけれども、それは、学問的良心云々というより、僕が愛国者だからです。日本がこれからもしっかり存続してほしい。盤石の土台の上に、国の制度を基礎づけたい。僕はそう思っている。そのためには国民にとって都合の悪い話も、体面の悪い話も、どんどん織り込んで、清濁併せ呑める「タフな物語」を立ち上げることが必要だと思う。だから、「南京虐殺はなかった」とか「慰安婦制度に国は関与していない」とかぐずぐず言い訳がましいことを言っているようではだめなんです。

これが正しい主張でしょう。

 

この文章を見て感じたことですが、「比較戦勝国論」も必要かなということです。

その中でももっとも性悪な国が戦勝国の利益を独り占めしたために世界が崩れ去ろうとしています。