民俗学や社会学の本ではなく、「商標」に関する内容の本で、弁理士の茅原さんが書いています。
タイトルは冒頭にあるように、やはり「竿だけ屋はなぜ潰れないのか」を意識して付けたということですが、ちょっと違うかも。
実はその「タイトル名の付け方」というのも本書の主題に関係します。
本のタイトルとして、どの程度まではパクリができるか。そういったことも商標という問題には重大な関わりがあります。
現在の名字調査によれば日本で一番多いのは「佐藤」だそうです。
トップとはいえ、その推定人口は約200万人です。
「佐藤」だけではなかなか目印となりづらいので、住所を表示するとか、表札の色を黒くするとか、工夫が必要になります。
こういった例え話で、「商標」というものの説明をしようとしています。
商標では定められた業界が異なれば同じものでも認められます。
たとえば、「ASAHI」という目印をみても、「朝日新聞」、「テレビ朝日」「アサヒビール」といろいろなものを思い浮かべられます。
これらは「登録商標」というもので、国に登録され商標権を取得されているものです。
しかし、商品の分野で34区分、サービスの分野で11区分、計45区分のそれぞれは独立したものですので、同じ目印であっても登録は可能です。
似たような商標で揉めて裁判沙汰になるということは頻発しています。
また、それを防衛するために関連する商標を登録してしまうという企業もあります。
こういった戦略というものも確かに存在して日夜攻防に明け暮れるということもあるようです。
商標登録の問題で展開を変えざるを得なかった例がいくつもあります。
テレビ番組の「ウルトラシリーズ」、最初の1966年のウルトラQに始まり、ウルトラマン、ウルトラセブン等何本もの番組が続いていますが、ウルトラマンのあとの、「ウルトラセブン」のみが「マン」がつかず、その後は「ウルトラマン何々」ということになっています。
これは、実はウルトラマンA(エース)の開始時にあります。
製作者側は当初は「ウルトラA」という名称で放映するつもりでした。
しかし、それ以前に他者により「ウルトラA~ウルトラZ」までは商標登録されていたのです。そのために、しかたなく「マン」を入れて「ウルトラマンA」となり、その後もそれにならったとか。
逆に自社ブランドを守るために防衛している例もあります。
カシオは腕時計「G-SHOCK」で大ヒットを飛ばし世界中に売れました。しかし、そうなると類似品も出てきます。それを防衛するためにカシオはそれ以前に「A-SHOCKから「Z-SHOCK」まですべて登録してあるそうです。
また、カルピスもその社名および製品名のカルピスを守るために「カレピス」「カロピス」「カラピス」「コルピス」「カルスピ」等々、ほとんど意味のないものまで登録してあるそうです。これは侵害する側が意味のない名前であってもパッと見たところ混同しやすければ良いと言う戦略を使うこともあるための防衛策だそうです。
こういった侵害例を扱う裁判も裁判所判断が分かれる場合も多くなかなか一筋縄では行かないもののようです。
商標というもの、大変な意味と効果があるもののようです。
しかし、こんな仕事はやりたくないな。