爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

硝酸の摂取は高血圧を是正し長寿につながるのか 西尾道徳さんの環境保全型農業レポートより

筑波大学教授で土壌微生物がご専門の西尾道徳さんが書いておられる「環境保全型農業レポート」に非常に悩ましい?記事が書かれていました。

 

No. 299 沖縄県人の長寿命は食事からの高硝酸摂取による | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

 

京都大学の家森さん、三浦さん、琉球大学の平良さんらのグループによる研究で、沖縄の伝統的食事が心疾患の発生を抑制しているためであり、それは野菜に含まれる硝酸が血圧低下に作用しているからだということです。

Implications from and for food cultures for cardiovascular diseases: Japanese food, particularly Okinawan diets. - PubMed - NCBI

 

 しかし、硝酸は体内で容易に亜硝酸に変化し、それがメトヘモグロビン血症を起こしたり、アミンなどと結びついてニトロソアミンなどの化合物を生成しそれが発がん性があるという話は有名なものであり、だから野菜栽培でも硝酸肥料を過剰に投与してはいけないということが言われています。

 

これについては西尾さんの次の記事にも触れてあり、これまでの常識と相反する話で少し困惑させられるものです。

No. 300 野菜の硝酸は有毒ではないのか | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

 

元の記事によれば、硝酸の摂取というものが野菜の摂食からであれば、野菜に含まれる抗酸化物質の作用でメトヘモグロビン発がん性物質の生成が防がれるために、硝酸からの一酸化窒素(NO)が血圧降下作用を発揮することだけが影響を見せるためだということです。

 一方、水や肉などから多量の硝酸を摂取した場合はそのような抗酸化物質による保護作用がないために悪影響が出るということもある可能性が出てくるかも知れません。

 

かなり微妙な各種の作用の兼ね合いでそういったことが出てくるようです。

したがって、状況により、人により、作用の出方というものは変わってくるということでしょうか。

 

ありそうな例としては、硝酸を含む野菜を多食して、一酸化窒素による血圧降下作用により高血圧は緩和されたが、結局ガンになりましたということも考えられそうです。

 

自然の動植物を食料として食べている以上、身体に良いばかりの食品、悪いばかりの食品というものは無いでしょう。適度に、バランスよく食べるのが良いというのはこういった例からも分かるようです。

 

ここでの結論だけを見て、「硝酸は体に良い」という点のみを捉え、野菜からの硝酸だけを取り出して健康食品にしたら悪影響だけが拡大されるということが予測できるわけですが、この「硝酸」という単語を別の物質名に取り替えれば今の健康食品ブームでいろいろな例に当たると思いませんか。

このような危うい状況でのブームなんだということが分かる事例かと思います。