爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ユダヤの世界」NHK海外取材班

これもいわくありの本です。久し振りで読みました。
昭和49年発行とあります。実はこの年は大学入学した年であり、その教養課程で社会科学からの選択科目として西洋史を取ったと言うことがありました。元々歴史が好きだったと言うこともあり、東洋史・西洋史連続の受講をしましたが、西洋史といえば当然ヨーロッパの歴史の授業だと思っていました。
その講師が板垣雄三氏。当時は助教授だったと思いますが、まさかユダヤイスラエルが専門とは知りませんでした。講義が始まると「ポアレチオン」だとか「アンチセミティズム」だとか、まったく耳慣れない言葉が連発で、あっけに取られたものでした。
本書はその教科書と言うわけではなかったのですが、参考のために何か本はないかと探して買ったものだと思います。

67年に第3次中東戦争が起きたものの、その別称のとおりわずか6日間で勝負がついてしまい、その後はパレスチナゲリラの活動が活発となりました。そして相次ぐハイジャック事件や内戦・テロが続発するという時代でした。その背景や現状を世界各国のユダヤ社会を取材して描き出そうとしたのがNHKの取材班で、1973年にテレビ番組として放送した内容を本にまとめたというものです。
ユダヤ人の住む社会、東ヨーロッパ、フランスなど西欧、アメリカ、そしてイスラエルと世界各国を回り多くのユダヤ人にインタビューをしたという内容です。
現在はイスラエルパレスチナとの争いという面が主になっていますが、当時はアラブ各国とも戦争状態でした。したがってイスラエルでの兵士への応募というのも各国からのユダヤ人の参加が相次いでいたようです。それにも諸国間の温度差の違いと言うのもあり、また個人差も大きかったようです。

さらに、ユダヤ人と言っても遺伝的な人種の差と言うものも存在し、東ヨーロッパ出身者とアメリカなどのユダヤ人とは大きく異なり、また中東に昔から居住していたものも相当違うと言うことがあり、当時でもそのグループ間の軋轢と言うものも存在していたと言うことがわかります。

本書はユダヤ人メインの取材と言うことで、パレスチナ難民に関してはそれほどのボリュームはありませんでしたが、現在はそちらの方が大きくなっているようです。約40年も経っているのですが、さすがにその程度の時間では埋められるようなものではないのでしょう。仮にイスラエルが無かったとしたら現在のイスラム過激派は無かったかどうか、考えをめぐらすのも意味あることかも知れません。