著者は脚本家でテレビドラマも多数手掛けていますが、東京に沖縄料理店を開業した縁で琉球料理についていろいろと調べるようになり、この本の基となる「御膳本草」に出会ったそうです。
御膳本草というのは、琉球王朝時代の1832年に王府の侍医頭の渡嘉敷親雲上通寛(とかしきべーちんつうかん)が中国に渡り食医学を修行、琉球に帰国後に著した書物で、琉球で食べられていた食材約300種について効能・食べ合わせのタブー、調理法などを記したというものです。
本書はその御膳本草を元に60の食材を選び料理を再現したものです。
すべての食材・料理にきれいなカラー写真が付けられているので、目で見ても楽しいものとなっています。
日本でも中国の李時珍が明代に著した本草綱目が紹介され、また貝原益軒が1709年に大和本草を著してはいましたが、日本においては食事に活かすという考え方があまり発達せず単なる博物学的な興味にとどまっていたようです。
その点、沖縄では食文化と食療養とが密接に関連し、御膳本草が19世紀半ばと言う遅い時代の発行であるにも関わらず、民衆の中にも根付く雰囲気があったということです。
食材は穀類、五穀造醸類、菜類、瓜類、海菜類、家獣類、等のそれぞれについて御膳本草の記載の引用、解説、それを用いた料理の紹介がなされており、その写真も非常に美しいものとなっています。
例えば、「もちきび」(キビ団子の材料として知られる)は琉球では「モチマアジン」と呼ばれるのですが、久しく食えば熱を生じ五臓をくらまして能く眠らしむとあります。
それを用いて作られている料理は「イイヤチ」というもので、うるち米とモチキビを混ぜて炊き半つぶしにして芭蕉の葉で包んで蒸すというものです。
沖縄料理と言うと豚を隅々まで食べるとか、ウミヘビを食べると言ったイメージでしたが、なかなか奥深いもののようです。