爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ウィキペディア革命」ピエール・アスリーヌ他著 木村忠正解説

ウィキペディアの解説をコピーアンドペーストでつないだだけのレポートが大学などで横行しているという話は日本でもよく聞きますが、これはフランスでの事情を書かれた本です。あちらでも状況は変わらないようです。

著者らはフランスの作家・ジャーナリストのグループですが、解説者の木村さんは東大の准教授ということです。

しかし、本書の中にも書かれているように、これはウィキペディアの批判だけを書いたわけではないということです。数々の欠点があるのは確かですが、それを補った利点もあるということですが、それは分野によって相当な差がありそうです。

ウィキペディアの害毒が特に強いのは、フランスでもやはり大学の教養課程を中心とした教育現場のようです。そこではさほど学問の専門性が行き届かない学生がおり、彼らには簡単に検索できそこそこ確からしい内容が書かれているウィキペディアは最適の道具となっているようです。
しかし、問題点は内容の不確実性にあり、特に学問領域ではそれが致命的な欠点になります。ニュースになるような事柄では速報性が利点となる場合もありますが、そういった事態とはあまり関係のない分野ではやはり信頼性と確実な内容が必要となります。

また、政治的な問題などでは対立する陣営からの訂正合戦となることが往々にしてあり、ウィキ側もいろいろとこういった「荒らし」と言われる操作に対する防衛策はとっていますが不十分なようです。
それが個人に対する名誉毀損などの犯罪行為に至る場合も多く、その防衛策も不完全ということです。

木村さんの解説の中には、ウィキペディアのリスクとして「正確性」「動機」「不確実な専門性」「不安定性」「対象範囲の偏り」「参照源」があると書かれています。学術的な内容を扱うには危険なものかもしれません。

それでも探す内容によっては非常に優れた道具かもしれません。まあいくら嫌がっても無くなるわけはないでしょうから、限界を知って上手く使っていくということなんでしょう。