爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「飛行機はなぜ落ちるか」遠藤浩著

これもちょっと古い本ですが、94年に出版されていますので20年前のものです。飛行機設計に長く関わってきた遠藤さんが書いています。

飛行機事故の要因として、天候・構造・エンジン・人為ミス・自動化・経営のそれぞれに分け説明していますが、どの事故も一つの要因だけで起こったわけではなく主因のほかにもいくつもの原因が重なっておきています。
それにしても事故の多いことには改めて圧倒されます。それでも自動車事故よりは少ないのでしょうが、一つの要因についてもすぐに何件もの事故例が上がってくるようです。それぞれの事故で少なからぬ人々が犠牲になっています。現代の航空というものはそれらの犠牲の上に成り立っているということでしょう。
それにしても事故原因の中には稀なものもあり、起こってみて初めて分かったということも多いのですが、中には「そんなこと考えずにやったのか」というようなものもありそうです。もし本当に「予防原則」というものを適用するならとても実用化はできなかったのが飛行機というものかも知れません。

天候の影響は飛行機事故が起こって初めて明らかになったという現象もあるようで、それで気象学自体も発展してきたようです。ダウンバーストマイクロバーストといったものも事故が起こらなければ注目もされなかったかもしれません。また、飛行中の着氷、飛行前の着氷というものも決して軽視できないということも以前はそれほど認識されていなかったようです。冬になると飛行機に積もった雪を神経質なほど落としているのを見ていましたが、その理由もわかりました。

構造上の問題では、日航機ジャンボの墜落でも関係していたようですが、そもそも金属疲労という問題も飛行機事故が無ければそこまで着目はされなかったかもしれません。機体や部品の疲労の管理という考え方もそこから発展してきたようです。

天候や機体構造といった要因もさることながら、やはりもっとも問題になるのは人為ミスによるものです。これもあとから見ると唖然とするようなミスが起きていますが、その場になってみると誰でも似たような行動を取るのかもしれません。

本書執筆当時からすると現在はさらに進行している操縦自動化の影響ですが、これが原因とされる事故も数多くあるようです。自動化プログラミングの不十分さが原因としか言えないのですが、これも事故が起こってから修正する形で進化していきます。生贄なしでは進まないようです。

無数の事故例があるようですが、それでも安全性は高い方なんでしょう。狭い日本の中でもなかなか飛行機無しでは移動も不便になってしまいました。せめて乗る時には車窓の風景でも楽しんでいきましょう。