爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ポピュリズムを考える」吉田徹著

政治学者で北海道大学准教授の著者がポピュリズムというものについて古今東西のあれこれを解説していますので、全体を把握するには有益かと思います。

ポピュリズムというと、人気取りの政策で力を掴む政治家というイメージで、サルコジベルルスコーニという政治家がその傾向が強いものと言われてきましたが、日本でも小泉純一郎というまさにその典型という政治家が出てしまいました。
しかし、著者の書いているように民主主義というものは本来が選挙をする国民の賛同を得られなければ政権にも就けませんので、良い民主主義?とポピュリズムとの差は実はほとんど無いのかもしれません。
「無意味で安直なポピュリズム批判に再考を促す」というのが本書の目的だと著者は書いています。
そればかりでないのは当然で、ポピュリズムというものを深く考えていくことが現在の民主主義というものを考えることにつながるともあります。

日本の政治状況が特異ということはなく、世界共通の現象のようですが、日本の場合は55年体制という自民党主体の政治状況が安定的に続いてきました。その中では様々な面で利益を受ける人からの票で安定勢力となるというまさに「利益誘導型」政治が続いていたのですが、これが世界情勢の変化に応じて続けられなくなり、「改革」の必要性だけは叫ばれるようになりました。
そんな中で、「企業的発想」で、「夢」を売り、さらに「敵」を作り出して激しく攻撃することで支持を集めるという手法でサルコジベルルスコーニも政権を取りましたが、それをさらに進める形で小泉改革が進行したということです。

本書は2011年出版ですので、小泉退場のあと自民党の1年首相が続き民主党に政権が移ったところでした。その後の展開も見ての通りですが、小泉から民主党までが一貫して敵視してきた官僚を現在の政権はまったく味方にしているようです。しかし、アベノミクスそのものがポピュリズム的政策といえるようですがどうでしょうか。敵が居なくなったので韓国中国を持ってきたのでしょうか。
どうも政治学というのは極めて難しく感じます。