爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「KKニッポン就職事情」佐高信著

辛辣な政財界批判で知られる佐高さんが企業就職にまつわる様々な事情を比較的淡々と紹介したものですが、発行されたのは1990年でバブル真っ盛り、元々は新聞に連載された記事ですが、それが書かれたのは85年以前のようですので、バブル以前の昔の企業社会そのものの時代の話です。
佐高さんは企業に身も心も捧げたような人々を批判することが激しいのですが、この本では事実を書かれているのみという印象であまり激烈な批判はされていません。新聞記事という事情もあったのでしょうか。

しかし、このような経済関係の本は時代が変わると全く事情が変わってしまい、現実的な意味はなくなってしまうこともあるようですが、あの当時の社会の雰囲気を覚えているものにとっては懐かしさも覚えます。就職に取り掛かるのも大学4年になってからとか、男女雇用機会均等法は施行されたものの実質的な男女差別はまだまったく変わっていなかったとか、あほらしいほどの新入社員研修とか、その体制の中に入り込むことは多大な労力を要するものの、入ってしまえば安楽ともいえる社員生活を送ることができたということが今となっては夢のようです。

まあ細かいところは最早ほとんど意味の無い昔話かも知れませんが、ひとつだけ気になるのは、今でも存続している某化学メーカーの当時の社長が、ABO血液型性格診断を信じきっていて、新人採用には辛うじて思いとどまったようですが、取締役選任には血液型を応用したとか。佐高さんが訪れたら、例の悪名高い能美正比古の「血液型人間学」を差し出し、これで少し勉強したまえと言ったとか。本当ならひどい話です。そのメーカーはまだ残っていますが、大丈夫なのかと不思議なほどです。血液型性格占いは科学者からは批判されて続けていますが一向に衰えることはありません。一部に強い信奉者はいるものの、大抵は軽い気持ちで楽しむようですが、その言い分に「話題として楽しんでいるだけだからあまり目くじら立てなくても」というものが多いようですが、実際に広く知られた大企業でこのようなことが横行していたという事実があるということは知っておいても良いことでしょう。