爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「三星堆・中国古代文明の謎」徐朝龍著

中国出身で京都大学で博士を取られた歴史学者の徐さんが三星堆文明について1998年に書かれた本です。その後の展開もあるかもしれませんが、その時点での分析と言うことです。
三星堆遺跡は中国四川省で1986年に発見され、特異な形状の金製品の大量の出土というセンセーショナルなものでしたが、中国の史学会でも中央重視の風潮の中では四川省と言う僻地の文明と言うものを正統に評価できる人は少なかったようです。
あの目の突き出たマスクという異様なものは印象的ですが、あれは「縦目」と言うべきものだそうで、そういったものは実は文献上は他にも出てきていたものだそうです。

三星堆に大きな遺跡を残した文明は紀元前3000年くらいには成立していたようで、中央でもまだ夏の王朝が始まらなかった頃でもあり決して遅かったわけではありません。その後、夏商(殷)周の各王朝のあいだ、わずかに関係しあいながら独立して発展していたようですが、最後は秦王朝に取り込まれてしまいました。

この文明については、文書の記録は残っていないようですが、実は「山海経」というものが三星堆文明を伝えていたものではないかと言うのが著者の主張です。
山海経は成立年代もはっきりしないものですが、漢の時代にははっきりとした形になっていたようです。しかし、その内容があまりにも突飛なため歴史書としては扱われず神話や法螺話として見られてきました。
しかし、どうも蜀や巴の地方、すなわち三星堆文明と言うべきものを記録したのではないかと言うように見られます。

周の前半、穆王という王がいましたが、その征西伝というものがあります。西の方、崑崙山まで行って西王母と会ったというものですが、それが実は三星堆ではないかと言う論も述べられています。そのような交流も有り得たかもしれないと思わせます。