爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「アメリカン・デモクラシーの逆説」渡辺靖著

ハーバード大学でアメリカ研究で博士号を取り、その後イギリスなどで研究を続け慶応大学の教授になっている渡辺さんがアメリカのデモクラシー現況につき書かれたものです。
本書のあとがきに、2010年のハーバード大学の卒業式で卒業生代表としてスピーチをしたジミーティングルさんの演説が載っています。ティングルさんは有名なコメディアンで、50歳を過ぎてから大学に入りミッドキャリアプログラムを終了したということです。そこにはそれまでの人生、そして大学を目指し終了したということをユーモアたっぷりに話しています。そのような面に見られるアメリカの「陽気で、楽天的で、寛大で、フェアな」点を十分に表現していますが、確かにそのような面が多くあり、それがアメリカの魅力にもなっていますが、そうではない点も非常に多く、またそれが世界中にアメリカの敵を作る要因にもなっています。これはその方に力点を置かれて書かれています。

黒人などの貧困層に対する政治の空白はさらにひどいもので、ハリケーン対策など見ても歴然としているようです。また、政治の各所に見られる金に関する問題も激しくなるばかりのようです。宗教でもより過激な宗派、キリスト教イスラム教を問わずその方向性が強くなるなど、困った状況です。

そのようなアメリカが唯一つの超大国である今の世界が不安定なのも間違いなく、またアメリカが実はそのような超大国としての責務を果たしていないことも問題をさらに複雑化しています。
そのようなアメリカに付いていくしかない日本というのも極めて不安定にならざるを得ないでしょう。