こんな時期になんですが、「富士山噴火の危険性」なるレポートが出され、首都機能が止まる危険性があるということです。
www.nikkei.com政府中央防災会議作業部会で報告書案をまとめたということですが、「最悪の場合」鉄道停止、首都機能停止といったことが含まれています。
しかし、その想定の根拠は「江戸時代の宝永噴火と同規模、同種の噴火」でしかありません。
そんなもの「最悪」でもなんでもないと思うのですが。
宝永噴火は1707年に起きたもので、富士山東南部の宝永火口から大量の火山灰を噴出しました。
西風に乗って関東地方に火山灰が降り積もりました。
特に御殿場や酒匂川周辺などでは大量の灰が積もり大きな被害が出ています。
富士山は70万年ほど前から活動を始めたという非常に若い火山ですが、その噴火様式も大きく変わってきているようです。
10万年ほど前から本格的な活動を開始し、現在の富士山に近い形を作ってきました。
これを「古富士火山期」と呼び、溶岩や火山灰を噴出し3000m級にまで達しました。
1万5000年前からは「新富士火山期」となり、噴火の様態も変化してきました。
上記Wikipediaによれば、
「新富士火山の噴火では、溶岩流・火砕流・スコリア・火山灰・山体崩壊・側火山の噴火などの諸現象が発生している」とあり、その噴火形式は非常にバラエティーに富んでいることが分かります。
その中でも時期によってやや違いがあるようです。
紀元前15000年から同6000年頃まで 山頂噴火と山腹噴火、大量の玄武岩質溶岩を噴出し、駿河湾に達する。
紀元前6000年から同3600年頃まで 活動が低調
紀元前3600年から同1500年頃まで 現在の山体が形成される
紀元前1500年から同300年頃まで 溶岩流出が減り爆発噴火が起きる
紀元前300年以降現在まで 貞観噴火と宝永噴火で大きく異なる。
このように、何が起きるか分からないのが富士山噴火と言えるのではないかと思います。
特に、現在に至る時期の2つの大噴火、864年の貞観噴火と1707年の宝永噴火は様式が全く異なります。
貞観噴火では山腹から大量の溶岩流を流し青木が原樹海を形成し富士五湖もこの時に形成されました。
宝永噴火では山腹の宝永火口から大量の火山灰を噴出する爆発的噴火を起こしました。
噴火様式は異なるものの噴出物の化学組成は同じであり、マグマ上昇中の脱水過程に違いがあったということです。
もしも、富士山南麓を火口とする溶岩流噴出の噴火が起きればどうでしょうか。
東京周辺への直接影響は少なくなるかもしれませんが、工業地帯で人口も多い静岡県東部の被害は甚大となり、さらに東名高速、新幹線等日本の東西をつなぐ最重要の交通網が破壊的被害を受ける危険性も大きいものでしょう。
「東京に火山灰が積もって通信ができなくなる」などの比ではないと思いますが。
なお、これまでには山体崩壊(磐梯山のものが有名)も起きており、2900年前には地震に伴って御殿場周辺から駿河湾まで流入する泥流が発生しました。
これも大きな被害を引き起こすものになるでしょう。
どうも、今回の富士山噴火の被害予測なる報告書の意図が不明です。
より強靭な体制を整えるべきだというのでしょうか。
それとも、東京はもう危険すぎるので、安全な場所に遷都すべきだというのでしょうか。
もしも、後者であれば納得できますが、絶対に違うでしょう。
そんなことを提言する根性のある人たちとも思えません。
ただ、人々を脅そうというだけのもののようです。