禅は「不立文字」という言葉が示すように文字で書けないものを師から伝えられるものなのでしょうが、それでも禅語という言葉が多く残っています。
本当のところは参禅で掴むしかないのでしょうが、それに至るところは言葉で示すということなのでしょうか。
この本は禅僧でもありながら中国哲学研究者として大学教授でもあった久須本さんが昭和57年に出版されたものです。
禅語の中から100を選びできるだけ平明に解説したということです。
100語は長さの順に並べてあるようで、最初は「無」「喝」から始まり最後の100番目は「山家富貴銀千樹、漁夫風流玉一簣」までとなっています。
26番が「不立文字」です。
これは禅のもっとも基本的な教えですが、禅の初祖達磨大師が唱えた語とされています。
しかしおそらくは中国の唐宋時代に作られたものが達磨大師に仮託されたものでしょう。
禅宗の中でも特に第六祖恵能禅師によって起こされた南宗禅で協調されていたということです。
29番に「見性成仏」があります。
一般的には成仏とは死ぬことに使われていますが、もともとは修行によって迷いを払い真理を悟って仏となるということを指します。
したがって、見性成仏とは自覚して仏となること、すなわち真実の純粋な人間になることだそうです。
57番「日々是好日」は一般でも良く使われている言葉です。
しかし禅門では単に「今日も結構な良い日でした」ではありません。
その日が好日だということで終わらせることなく、心の好日に置き換えなければならないのだそうです。
81番「心頭滅却すれば火もまた涼し」
日本では甲斐の恵林寺の快川禅師によって有名な句となりましたが、宋代の死心悟新禅師の言であったそうです。
ただし、もとは唐代の詩人杜彦之(杜牧の子)の七言絶句の詩から取ったようです。
やはり禅というものは奥の深い世界だと感じさせられます。