著者は高名な沖縄歴史学者で、1947年には没しているのですが、これはその亡くなる寸前に書かれた沖縄歴史物語にいくつかの短編を併せたものです。
沖縄歴史物語というものは、1928年よりアメリカに伊波氏が講演旅行に出かけて主に沖縄出身の移民を前に話した内容の「沖縄よ何処へ」という講演録を基に書かれたということですが、おそらくかなりの加筆がされたものでしょう。
この本の内容は非常に詳細なものでありとても講演で話しきれるものではないと思います。
沖縄の歴史を、その万葉集にも比せられる「おもろそうし」という神歌(おもろ)から始められているのですが、内容は解説なしには分かりづらいものでした。
しかし、琉球の統一から薩摩の島津氏による侵攻とその後の支配、さらに明治維新後に日本に編入を決定した琉球処分と詳しい歴史を記されています。
伊波氏の元のアメリカ講演では、聴衆は沖縄出身者と想定され琉球言葉(ウチナーグチ)で語られたそうです。その内容も当然のことながら沖縄の人々に向けられたものであり、日本人であっても他地方の人間にはとっつきにくいものでした。
しかし、薩摩支配下での琉球というものは非常にひどい状況に置かれていたようです。
それは明治以降も本質的には変わらず、植民地支配のようなものだったといえるでしょう。
この沖縄歴史物語の後に、アメリカ支配が続きその後の日本返還の歴史が続くわけです。苦難の歴史と言えるものでしょう。
日本人全てが、もう少しきちんと勉強していくべきものと感じました。