爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「地球温暖化は止まらない」フレッド・シンガー、デニス・エイヴァリー著

フレッド・シンガー氏は気候物理学者でヴァージニア大学終身教授ということです。IPCCにも関係していたようです。
しかし、本書はIPCCの主張がいかに科学的にいい加減なものかということを気候に関連した各種の科学的研究の成果に基づいて主張したものです。

温暖化が人類の排出する二酸化炭素によるものだという二酸化炭素温暖化論に対しては様々な反論がありますが、IPCCとそれを信じる政府などは科学的議論によりそれらの反論は排斥されたと主張しているもののそれは不当であるというものです。
そもそも、二酸化炭素濃度の上昇に伴って気温が上昇しているということを主張するために、これまでの安定しており二酸化炭素濃度が上昇してから気温もそれに伴って上がってきたという主張が悪名高いマイケル・マンホッケースティックグラフですが、この前提となっているのが少なくともこれまでの1000年は気温が安定していたというものです。しかし、その当時からも異論が続出していますが、最近の研究からも中世温暖期とその後17世紀くらいに起こった小氷河期というものがあったことは明らかであるということです。これは気温というものをきちんと測定し始めたのは最近になってからのことであり、それ以前の気温傾向を推察するには様々な資料の検討が必要であるにも関わらず、極めて恣意的な少数の資料のみを使ったからに他なりません。
多くの過去の気温を推定する研究によれば大きな氷河期が終わった10万年前以降はおよそ1500年の周期で温暖化と寒冷化を繰り返しており、今回の温暖化もその大きな傾向に含まれているということです。

そのような根拠の希薄な二酸化炭素温暖化論者の主張ですが、科学的な基盤は薄いにも関わらずその温暖化影響についての主張は低級な恫喝に終始しているというのが著者の主張です。
これまでも100年で2度などと言うものよりもはるかに大きな変動が自然の気候変動により起こっていたにも関わらず動物の広範囲な絶滅なども起こっていないというものです。

温暖化の原因についての著者の主張はかなりの根拠があるものであり、二酸化炭素温暖化論者の反論というものが正当な形でなされていないと思いますし、その納得させられる反論無しにはIPCCの主張を信じるわけには行かないという点では著者の意見にも同意できるのですが、そこから先の部分ではちょっと疑問があります。
京都議定書も崩壊しており二酸化炭素排出削減ということも不可能であるというのは確かなのですが、それを強行することは経済活動を低下させ社会に打撃を与えるからという理由にはちょっと??です。

著者は化石燃料が減少し枯渇に向かうということには同意していますが、その枯渇以前に新エネルギーが開発できるということを無根拠に信じているようです。そのためにさらに根拠の無い二酸化炭素温暖化論のために化石燃料の使用を削減するという必要はなく、経済発展のためにまだまだ使えというものですが、どうでしょうか。

途中までは確かな主張であっても最後がめちゃくちゃという典型的な近視眼論に見えます。