爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「酒を楽しむ本」佐藤信著

これも昔読んだ本の再読です。
国税庁の鑑定官だった佐藤さんが書かれ、昭和39年に初版が出版された講談社ブルーバックスです。私が買ったのは昭和48年の第10版で、そこから考えると大学に入ってすぐかと思います。
してみると、まだ大学の学部・学科は未定であり、まだ自分がどのような職に就くかもまったく決まっていなかった頃であるはずですが、今回読み直してみると昨年まで勤めていた職業がこの本の内容と一致する点が多いことに驚きます。職業選択の際にこの本から影響を受けたという思いはほとんど無かったのですが、実際はなんらかの影響があったのかもしれません。

著者の佐藤さんは大学の学部・学科まで同じの先輩に当たります。(とはいえ、何十年も後の後輩ですが)したがって、仕事の内容もかなり重なる部分が多いのですが、改めてみるとこの分野の日本での展開においては先駆的な役割をされていたということが良く分かります。
著者の職業の国税庁醸造試験所(現在は醸造研究所)の鑑定官というのは酒税の安定的な徴収を可能にするために、酒類製造の品質向上を国の立場からバックアップするというものです。その意味で、この本にもあるような酒の品質判定のために現在では不可欠な官能検査法という方法を日本に導入した大きな役割を果たしていたということになります。また、そのデータ処理に重要な、推計学的手法ということも取り入れていたことになります。

アルコールの人体への影響についても、詳しく捉えられ現在の飲酒運転取締りにもつながる影響を感じます。
実に50年近く前に書かれた本ですが、だからこそ歴史的な意味もあるように思います。