爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「レ・ミゼラブル百六景」鹿島茂著

レ・ミゼラブル ああ無常と言えばビクトル・ユゴーの名作で最近も映画化されていますが、実際に小説を読んだという人はあまり居ないというものでしょう。
著者の鹿島さんもフランス文学の大学の先生ですが、ずっと読んでいなかったということだったのですが、フランスに出かけた折にユーグ版という原作発表からさほど遅れずに出版された本を入手し、その挿絵に驚いたそうです。
19世紀後半の挿絵画家を何人も使い、全般にわたって挿絵360枚を施していたもので、当時のフランスの特に下層階級の人々の陰鬱な生活を表していて独特の雰囲気があります。

本書はそのうち230編の挿絵を毎ページに配し、小説の概要とそれが表している当時の世相なども解説しているものです。

舞台は19世紀前半ですので、政治的にも激動ですが、庶民の暮しはまだ圧倒的な貧しさの中にあり、人道的な配慮と言うものもほとんど未成熟であった時代です。ジャン・バルジャンがパンを盗んだだけで19年も徒刑囚として服役したと言うのもひどい話ですが、ファンチーヌとコゼットの母子の運命と言うものも悲惨なもので、ミゼラブルという言葉の通りです。

本書の表紙にもなっている、幼いコゼットが大きな箒を持たされている挿絵は映画の際にもどこかに引用されていたかもしれませんが、印象的なものです。
これだけ、見せられてもやはり元の小説を読むのはちょっと面倒かもしれません。