爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ダルタニャン物語3 我は王軍、友は叛軍」アレクサンドル・デュマ著

ダルタニャン物語の第2部、「二十年後」は全11巻の講談社文庫版では3,4,5に当たります。1,2の三銃士の部分は様々な訳本がありますが、二十年後の部分はこの鈴木力衛訳版だけだということです。
舞台は前作から20年経ったフランス宮廷です。前作の最後で護衛隊副隊長になったダルタニャンはそのまま軍務を続けていますが、他の三銃士はその後それぞれ退役して別の道を歩んでおり、消息もつかめなくなっていました。
ちょうど、リシュリューもルイ13世も亡くなりルイ14世はまだ幼く、太后アンヌ・ドートリッシュが枢機官マザランとともに統治をしていますが、不満を持った貴族に加え、市民も巻き込んだフロンドの乱寸前の頃で、不穏な情勢になってきています。
マザランの命令で、行方不明の三銃士を探し出し、ともに働こうと言うダルタニャンは捜索を開始しますが、アラミスは宗教家として、アトスはラウルと言う子供の教育ということで出馬を断り、ポルトスのみが男爵にしてもらうと言う約束で出てきます。
二人がパリに帰りついたちょうどその時に、幽閉されていたフロンド派の重鎮のボーフォール公が脱走したと言う知らせがマザランに届き、その場に居たダルタニャンとポルトスが追跡を始めますが、その果てに追いついた時にボーフォール公の周りに居たのがアトスとアラミスで、実は二人ともフロンド派の重要なメンバーであったと言うことになります。
4人は翌日に再会し一触即発の場での会談となりますが、アトスの申し出で立場は違っても友情に変わりないことを誓って分かれます。

この3巻では、その後の展開に大きな影響を及ぼすアトスの子供ラウルが実の母親と初めて面会すること、そして軍人として戦場に赴くところまでが記されています。

前作ではまだかなり中世的な雰囲気のあるようなパリ周辺の光景が、市民の活躍など近代的な趣が多くなってくるように感じます。年代では1650年頃なので、日本で言えば江戸時代初期でしょうか。やはり日本でも町人の力が大きく伸びつつあるころです。
フロンドの乱を経て貴族の勢力の力が制限され国王への中央集権化が進むことになります。