爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「空港の大問題がよくわかる」上村敏之、平井小百合著

財政学が専門で関西学院大学教授の上村さんと大和総研公共事業コンサルタントの平井さんが空港にまつわる諸問題を詳しく解説したものです。
赤字空港といってよく問題視されますが、実はどの程度の赤字かということははっきりとは分かりません。国管理空港と地方管理空港がありますが、どちらも空港ごとの収支といったものは発表されず、赤字云々の報道もそれを見た上でのものではないようです。
唯一の例外は神戸空港で、神戸市の特別会計で運営されているために収支決算も発表されているそうです。

国の管理空港もそれぞれの空港ごとに財政を管理されているわけではなく、全部まとめてのどんぶり勘定になっているため、黒字の空港の分を赤字の空港に回しているという実体もあるようです。

ただし、本当に赤字なら悪いのかというとそうとも言えない状況があります。著者が例に引くように、例えば高速道路・有料道路以外の一般道は全く通行料を取っていないためにその収支はもちろん完全な赤字ですが、誰もそれを問題とする人はいません。(本当にそれで良いのかどうかはまた別の問題ですが)したがって、空港の赤字というのもある程度までは容認できるという考え方もあるようです。

しかし、日本の空港には本当は不要なものも数多くあり、しかもその運行を最低限確保するということをJALANAに義務付けたためにそれらの航空会社の経営を圧迫したという経緯もあるようで、世界での航空会社間の競争を考えると決して放っておけない問題のようです。

また、日本でもLCCと呼ばれる低料金の航空会社が出てきましたが、ヨーロッパなどのものと比べると経営環境が非常に悪く、当然のことながら苦戦を強いられているようです。
ヨーロッパでは大都市に第2、第3の空港があり、そちらは着陸料も安く設定されているといった条件があるために低コスト運行も可能になっていますが、日本では特に運行需要の多い羽田は着陸回数もぎりぎりの状況で着陸料も世界基準より格段に高額なこともあり、なかなか格安料金というわけにもいかないそうです。

著者からの提言としては、とにかく各空港の財務の公平な発表をして問題点を洗い出し、その上で廃港するものはして、まともに経営できるものをしっかりと育てることだそうです。もっともな意見でした。