爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「レパントの海戦」塩野七生著

ローマ以降の地中海を扱った塩野さんの作品はこの前読みましたが、その中のそれぞれの部分を扱った作品がいくつか出版されています。これはそのうち、レパントの海戦を描いたものです。
キリスト教国側の連合艦隊のうち、ヴェネツィアの副官を務め海戦で戦死したアゴスティーノ・バルバリーゴという人を主にしてはいますが、そのほかにもコンスタンティノープル駐在のヴェネツィア大使のマーカントニオ・バルバロも大きな役割を果たします。バルバロはレパント海戦のあとトルコとの間に平和条約を結ぶのに尽力しますが、本国の姿勢のために交渉は難航しできた条約も非常に不本意なものでした。そのためにその後本国に帰任した際の元老院での報告演説において痛切な政府批判を行ったそうです。

それにしても、レパントの海戦というのはどういうものだったかという印象も予備知識もほとんど無かったのですが、トルコの膨張がこれで止められ、そのあとは衰退に向かったということは確かなのですが、それとともに海戦でもっとも活躍し多大な戦死者をだしたヴェネツィアもそれ以降は没落してしまうというのも皮肉な話です。これの後は地中海自体が世界の勢力争いの主戦場となることはなく、片田舎となってしまいました。