爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「十字軍物語1」塩野七生著

カノッサの屈辱”と”十字軍”、世界史で習った中世ヨーロッパの大きな事件ですが、漠然と”キリスト教の権威が強かった時代”という感覚で捉えていたのですが、実はそう簡単な話ではなかったようです。
神聖ローマ帝国皇帝ハインリッヒがローマ法王グレゴリウス7世に破門され、それを許してもらうために雪の中を立ちつくしたというカノッサの屈辱ですが、その後ハインリッヒが反撃し法王をローマより追い出してしまったということは歴史の教科書には載っていません。実はその次の次の法王ウルバンまでローマには戻れなかったと言うことです。
そのウルバン2世が1095年のクレルモン公会議で呼びかけたのが聖地エルサレムの奪還をするということでした。これはビザンチン帝国皇帝のアレクシウスの要請もあったのでしょうが、ウルバン2世にとってはハインリッヒに対抗する手段として利用するつもりだったようです。

それに答えて、出発したのは国王などではなく公爵・伯爵といった少し小粒の人々でした。1096年に出発した第1次十字軍は5万人という規模でした。統一の取れたものではなく、司令官というものもなく、ばらばらの人々でした。
しかし、それを迎えるイスラム諸国はさらにばらばらで、それぞれが領地争いをしているような状態だったようで、それが十字軍にとっては幸いし、アンティオキアに橋頭堡を築いた後、エルサレムに進軍しそこを占領することが可能となりました。
その後もエルサレム周辺を確保したまま、最初にやってきた人々の最後のエルサレム王ボードワンが死ぬ1118年までがこの物語1の範囲です。