爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ご先祖様はどちら様」高橋秀実著

ノンフィクション作家の高橋さんが、自分の先祖を知りたくて各地を廻っていろいろな人たちの話を聞き、発見をしたり迷路に入ったりということを書いていくというものです。

 

よほどの名家でない限り先祖代々が分かっているという人は居ないでしょう。

我が家も父が生きているうちに頼んで分かっていることを書き残してもらったために、ようやく父の祖父までは分かりますが、それ以上は検討もつきません。

 

しかし、現在NHKで放映されている「ファミリーヒストリー」という番組で結構昔のことまで調べていますので、調査法によっては分かるものなのかもしれません。

 

本書でもNHKほどの調査力は無いにしても、さすがに作家の根性というべきか、高橋さんもあちこちに入り込んで話を聞き出しています。

 

手始めはやはり、親の出身の市町村の役場に行って戸籍が残っているかどうかを調べることのようです。

著者も最初に父親の本籍があった横浜に赴き、区役所の戸籍係に尋ねますが、係員も結構そういった依頼者が多いようで慣れていらっしゃるようです。

時間もさほど立たないうちに父親が母親と結婚してから作った戸籍はわかりましたた、その前は宮城県にあったとか。そちらはその町の役場に問い合わせてみなければ分からず、それは自分で出かけるなり、郵送で依頼するといったことが必要になります。

 

なお、戸籍は記載者全員が除籍になって80年を経過すると廃棄されるということで、著者もあわてて母親の本籍地に急ぎます。

 

父親の出身地の戸籍も無事届き、双方4代前までの先祖の名は明らかになります。

 

そして、その記述をたどって宮城、静岡、山梨等々を調査して廻るわけですが、結局はよくわからないということになります。

最後に、清和源氏であろうということから京都の清和天皇陵をお参りして終わります。

 

 

家系図が残っている名家もありますが、それらの家系図なるものも大抵は江戸時代に捏造したものが多いようです。

そしてそこには有名な人から発したように書かれているのですが、家系研究者によると実際にほとんどの家はそういった有名で立派な人物の子孫に関係があることが多いようです。

これは、考えてみれば当然であり、先祖は代を遡ると大変な人数でありその中には著名な人物がどこかに入っている方が普通ということです。

 

この点については、思い当たりますね。

そもそも、子孫繁栄ができるのも金持ちや貴族など偉い人が多く、貧乏人は子供も持てないことが多いのですから、現在の人間のほとんどはそういった連中の血は引いているんでしょう。

 

 

清和天皇陵探索の際に、いろいろと著者も調べたようですが、天皇陵と称される古墳には相当怪しいものも含まれているようです。

研究者がそういった疑問点を指摘することもあるのですが、宮内庁はそれを一切変更するつもりはないとか。

担当者は「もし間違っていたとしてもすでに100年以上天皇陵としてお参りしてますので、魂はこちらに来ています」と語っていたそうです。

そこまで、開き直られたらもう何も言えないでしょう。

 

ご先祖様はどちら様

ご先祖様はどちら様

 

 

我が家も大した身分の先祖はいないでしょうが、調べてみようかと思わせるものでした。

 

土壌学者の西尾道徳さんが、モンゴメリー「土の文明史」でのキューバの有機農業について誤りを指摘

土壌学者で環境保全型農業ということを説いていらっしゃる西尾道徳さんが、そのサイトの中でワシントン大学教授で地質学が専門のデイヴィッド・モンゴメリーが書いた「土の文明史」という本の中でのキューバの有機農業について触れた部分の誤りを指摘しています。

 

No.321 キューバの「有機農業」がまた誤って宣伝される危険 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

 

ソ連崩壊にともない、キューバへのソ連からの大量の食料補給というものが途絶えてしまい、キューバは食糧危機に直面してしまいました。

また、同時にソ連からの化学肥料輸入も困難になりました。

 

そこで、キューバ政府は「有機農業推進」を強力に推し進め、その結果農業生産性は以前より向上し食料自給が可能となったということになっています。

モンゴメリーの著書でもそういった観点での主張が為されているということです。

 この「土の文明史」という本はかなりの話題を呼んでおり、この記述に影響されている人も出ているようです。

 

 

しかし、西尾さんがデータを挙げて強調しているのは、キューバはその時期に食料輸入が途絶えておらず、また化学肥料輸入も続けられていたということです。

 

ただし、その輸入量はかなり減少したのは間違いなく、その対策として都市での空地の補完的農業が推奨されており、その場では堆肥を使った農業が為されていました。

しかし、その実施面積も少ないものであり、取り立てて話題にすべき規模でもないようです。

 

西尾さんの立場は、「おわりに」の項にも書かれているように、

 

『土の文明史』を著したモントゴメリー教授は地質学の専門家だが,キューバの有機農業についてはあまり情報を収集しておらず,誤った情報に基づいて記述したようである。名著ではあるが,冒頭に紹介したキューバについての記述は誤った情報に基づいて書かれており,これを読んだ読者の間に,再び日本で有機農業だけで世界の食料不足が解決できるといった誤解が復活しないことを望む。

 

「有機農業にすれば食糧不足が解決できる」というのは誤解であるということです。

 

有機農業では生産性は低下するというのは間違いないものでしょう。

世界的に見て農業生産量は十分であり、食糧危機はその分配の不備であるというのが現状ですが、そのような前提などちょっとした条件で崩れるかもしれません。

その際には化学肥料と農薬で少しでも生産量を確保することが必要となるのですが、それすら供給できなくなる事態にはなってほしくないものです。

 

「1手詰将棋」高橋道雄著

詰将棋に関するエッセイ」とかいうものではなく、本当に「詰将棋だけ」の本です。

 

詰将棋」とは、将棋の終盤戦の詰むか詰まざるかというところだけを拾い出したようなもので、パズル的な要素が強いものです。

解答者(解く人)が攻め手となり、王手の連続で最短手筋で詰ませるというのがルールですがまあそこは良いでしょう。

 

上級者向けのものですと11手以上のものもありますが、初級者向けはだいたい3手詰、5手詰というところです。

 

そこのところ、本書は「1手詰」ということで、言わば「超初心者向け」というものです。

 

 

著者の高橋道雄さんはプロ棋士で、全盛時にはタイトルを何度か取ったこともある方です。

最近はあまり公式戦での活躍は聞きませんでしたが、本書を見ると初心者の指導にも力を入れておられるのでしょうか。

 

 

私も昔に将棋にはまっていた時期があり、その頃には7手詰、9手詰といったものにも挑戦したこともありましたが、最近ではまったく読みが続かなくなりました。

この本の200題の問題でも、2題を間違えてしまいました。

将棋など、老人のボケ防止にはちょうど良いんですが、やろうという意欲がなかなか湧きません。

 

1手詰将棋 (将棋パワーアップシリーズ)

1手詰将棋 (将棋パワーアップシリーズ)

 

 

もしかして 安倍クンてホントのバカ? 買いかぶっていただけだったのか。

昨日の国会審議での民進党議員の質問に答えたという安倍クン(もはや首相とか宰相とか呼ぶ気もなくなってきた)の答弁を報道で見て、衝撃を受けました。

 

www.nikkansports.com

私はこれまでの安倍クンの政権運営(というか、騙しの手口というか)を見て、これは相当周到に考えられた人心掌握法を駆使した闇の帝王のような人物かと、批判はしながらも一定の敬意をもってそのやり口を見てきたつもりですが、どうやらとんだ勘違いのようです。

 

民進党議員が夫人と籠池側との関係を「ずぶずぶ」と表現したのを捉え、「そんな品の悪い言葉を使うから民進党の支持率が低い」といったことを言っているようです。

 

もしかして、「自分の支持率が高いのは政策が良いからだと勘違いしてる?」

 

何か、唖然とさせられるような言葉でした。

 

アベノミクスという子供だましのごまかしで馬鹿な国民の票を取っていても、いずれは化けの皮が剥げるからそれまでの間に安保関連法案や改憲を終わらせてしまおうという思惑の政権運営で、それが怪しくなってきたらちょうどうまい具合にトランプ政権ができたのでその対外政策に乗っかって朝鮮不安を掻き立てて支持率を上げているだけの張り子政権が、それを自覚していないとは。

 

 

悪党は言え、その悪魔性の深さに感心して、「稀代の名総理として名を残す方法」までご披露したのに。ただのバカだったとは。

sohujojo.hatenablog.com

あまりのも落胆が大きく、しばらくは政治ネタには近寄る気力がなくなりました。

もう、日本がどうなっても知りません。

「嘘ばっかりの”経済常識”」岩田規久男著

経済関係の本は以前はほとんど読まなかったんですが、なぜか一冊だけ買って持っていました。

 

嫌いだったわけは、自分に基礎知識が無かったためもあり、何やら難しそうなことを、しかもどの本も偉そうな雰囲気で押し付けてくるように感じたためだったと思います。

(現在ではこちらも相当理論武装をしましたので、その程度の押しつけは跳ね返して本に書かれている欺瞞性を指摘できるように、なったかな?)

 

しかし、この本は1997年あたりの、ちょうど自分が管理職に上がるかどうかの時期で、経営や経済のことも少しは勉強せねばと思っていた頃に、気の迷いで?買ってしまったようです。

 

しかし、この著者は当時上智大学教授の岩田規久男氏、リフレ派の親玉でその後日銀副総裁としてあの黒田の片腕となり嘘の塊政策を推進した張本人ですから、この本の内容も推して知るべしというものでしょう。

 

 

本の内容は、極めて庶民向けに分かりやすく書かれているというものです。

経済学教授らしい登場人物がいろいろな人々と会話をしながら経済の問題点を解説していくというよくある形式の解説本で、おそらくゴーストライターがかなりの部分を書いているのではないかと思います。

 

文庫版発行は1996年ですが、元本は1991年出版、中のネタはバブル最盛期からバブル崩壊までの時期とあって、書いて有ることも右往左往のようです。

さすがの著者もこの時期には間違いのないことを言うのは厳しかったのでしょう。

 

 

一つ一つを取り上げる勇気もありませんが、最終章の「日本企業の株式配当性向は低すぎるか」についてだけ。

バブル後の株価低迷時に、「日本企業の株式の配当は低すぎるから株価が上がらない」という声が大きく出た時期があったそうです。

配当を高めれば株価も上がると言わんばかりの声も、まったく根拠もない話だったのですが、さすがにこの本でもそれは理屈に合わないと一蹴しています。

株主に対する株の無償交付を求める声もあったとか。

これも無意味だとしていますが、しかしあれもこれも全く自分のためしか考えない連中ばかりが多いことと感嘆させられます。

 

その後の経済の流れを見る時、昔の本をひっくり返すのも一つの思考のリフレッシュになるかもと思わせるものでした。

 

 

「戦国大名の正体 家中粛清と権威志向」鍛代敏雄著

著者のお名前は非常に難しい読み方ですが「きたい」と読むそうです。

日本中世史がご専門の歴史学者です。

 

戦国大名という人たちは、決して自分たちが「戦国大名」であるとは思っていませんでした。

しかし、ほぼ16世紀の100年間に国を支配していた大名たちが「戦国大名」であると言えます。

 

とはいえ、その時代の中でも性格の異なる戦国大名が様々存在しており、たとえば北条早雲黒田官兵衛はどちらも戦国大名と言えますが、まったく異なるものです。

 

 

戦国時代にはちょうどヨーロッパからの宣教師が盛んに来訪している時期でもあり、彼らの書いた報告などが残っていますが、そこで日本の戦国というものを評したルイス・フロイスの文章があります。

「われわれは土地や都市、村を奪うために戦うが、日本では戦争はいつでも米や麦などの食糧の奪い合いである」

このように、末期を除けば戦国時代の戦争というものは小規模な地域紛争であったようです。

 

また、大名家での家中の争いというものも多数発生しており、そこには家中の粛清と王殺し(主殺し)が頻発しています。

粛清し過ぎて家中の人間が少なくなり、家全体が力を失って他国に滅ぼされるということもあったようです。

 

 

大名はそれぞれ国を治めていました。その国を「国家」と呼んでいた例があるようです。

これは日本全体を国家と考えたわけではなく、自分が治める分国をそう呼んだということのようです。

 

室町時代から、守護大名は自分の領国を「御分国」と呼んでいたようです。

そのためか、その後の戦国大名も自分の国を「分国」と呼んでいた例が多いそうです。

 

また、自分自身のことをなんと言っていたかというと、「国主」という言い方はしていなかったようです。

足利将軍は「大樹」と称していたようですが、その有力大名は「屋形」という称号を許されていました。

戦国大名もそれにならって「御屋形様」と呼ばせていたようです。

また、「太守」という呼び方も大きな分国の領主である大内氏、大友氏、北条氏に見られます。

 

また、学校の日本史でも教えられているように、各大名が「分国法」を作ったとされています。

しかし、実際に知られている分国法はそれほど多いわけではなく、主に守護大名戦国大名となった、大内・今川・武田などに見られます。

その他の大名も分国法が無かったというわけではなく、成文法ではなくても判例法というべきものがあったようです。

 

 

戦国時代にはその前の時代とは異なり、大名の住む城館と家来や町人が住む町とが隣接するようになりました。

戦国城下町というものが成立するのですが、臣下を城下町に集めるということはなかなか難しいことだったようで、臣下の支配地の地元に残りたいという意識に対して、強権で集めるということも行われたようです。

 

 

戦国大名の正体 - 家中粛清と権威志向 (中公新書)

戦国大名の正体 - 家中粛清と権威志向 (中公新書)

 

 

この本も研究者の集大成といったもので、読むには手強いものでした。

まあ、あまりにも細かいところは飛ばし読みです。

 

「安心?!食べ物情報」にて渡辺宏さんが和牛についてまとめています。

いつも参考にさせていただいています、渡辺宏さんの「安心?!食べ物情報」今週の記事で、和牛に関する情報あれこれがまとめてあります。

 

http://food.kenji.ne.jp/review/review911.html

 

和牛子牛の販売価格が高騰しているとか。

 

酪農家の高齢化で廃業が相次いでいる他、口蹄疫の影響で殺処分も多く回復していないようです。

子牛育成酪農家は一息つけますが、肥育農家は苦しくなりそうです。

 

また、最近特に騒々しく言われている「A5ランク」などといった問題は、どうやらかつての牛肉輸入自由化の際に国産和牛の差別化という目的で作られた価値観によるようです。

 

【引用】

そして決定的な出来事が1990年代に起こる。GATTウルグアイ・ラ
ウンドによる牛肉自由化である。それまで輸入に高い障壁を設けて
いた牛肉市場を、基本的に自由化することとなったのである。欧米
の畜産国から見れば日本の畜産事情はまだまだ中小規模であり、価
格面では太刀打ちできない。ヘタをすれば日本の肉牛産業は壊滅し
てしまいかねない。

  そこで、日本の畜産を守ろうとする人たちはこう考えたのだろう
と推察する。

 欧米で生産される肉のほとんどが赤身中心の肉である。ならば日
本の牛の基準を霜降り度合いを重視するものにしてしまおう。そう
すれば、黒毛和牛に勝てる霜降りをもつ輸入肉などないのだから、
多くの日本の肉牛農家を守ることができる。赤身中心の輸入牛肉と
直接競合するのはホルスタインと交雑種だが、そこはなんとか生き
延びてもらおう。

 かくして、日本の牛肉の評価は、肉質(霜降り度合い)と歩留ま
り(1頭からどれだけの肉が取れるか)の2つに収斂していった。

 

実はそれまでの牛肉というものはここまでサシの入ったものでは無かったようです。

 

それでも食事の洋風化の影響もあり、徐々に脂肪分の多いものが好まれるようにはなってきており「霜降り」という言葉は広がっていました。

 

私も、「霜降り」はかなり以前から聞いたことがありますが、「A5ランク」などという文句はごく最近のように思います。

 

それがちょうどバブル前後のグルメブームとも重なり、高いものは美味いといった価値観醸成ともあいまって、「A5ランク和牛が味も最高」といったものになっていったんでしょう。

渡辺さんは触れていませんが、ここらへんにはテレビのグルメ番組の影響も強いのでしょうね。

 

渡辺さんの記事の中にもあるように、老舗すき焼き店でもあまりにもサシの多すぎる牛肉は旨味に乏しいとして使わなくなったところがあるそうです。

 

せいぜい脂肪分30%程度がもっとも美味しいとか。

 

 

食肉類のなかでも牛肉というものは他の鶏肉、豚肉、マトン、馬肉等と比べてもはるかに脂肪分が多くなりやすい肉質だそうです。

そして、牛の中でも特に黒毛和牛という種が霜降り状に脂肪が入りやすい性質があり、そのなかでも現在のA5ランク和牛を産み出している系統の血統がその性質が強かったとか。

 

 

こういう風に詳細な説明で、ようやくはっきりと現在の牛肉の状況がつかめました。

 

なお、我が家では和牛ステーキなどA5どころかはるかに下の等級でも食べません。(買えません)

まあ金が無いというのも主な理由ですが、どうも脂肪分が多すぎるのには舌がついていけないという理由もかなりの部分を占めています。

 

牛肉をたま~に食べる場合も赤身がたっぷりの海外産肉ばかりですが、その方が肉の旨味が味わえると感じていました。

 

それに間違いは無かったということが納得できました。