経済関係の本は以前はほとんど読まなかったんですが、なぜか一冊だけ買って持っていました。
嫌いだったわけは、自分に基礎知識が無かったためもあり、何やら難しそうなことを、しかもどの本も偉そうな雰囲気で押し付けてくるように感じたためだったと思います。
(現在ではこちらも相当理論武装をしましたので、その程度の押しつけは跳ね返して本に書かれている欺瞞性を指摘できるように、なったかな?)
しかし、この本は1997年あたりの、ちょうど自分が管理職に上がるかどうかの時期で、経営や経済のことも少しは勉強せねばと思っていた頃に、気の迷いで?買ってしまったようです。
しかし、この著者は当時上智大学教授の岩田規久男氏、リフレ派の親玉でその後日銀副総裁としてあの黒田の片腕となり嘘の塊政策を推進した張本人ですから、この本の内容も推して知るべしというものでしょう。
本の内容は、極めて庶民向けに分かりやすく書かれているというものです。
経済学教授らしい登場人物がいろいろな人々と会話をしながら経済の問題点を解説していくというよくある形式の解説本で、おそらくゴーストライターがかなりの部分を書いているのではないかと思います。
文庫版発行は1996年ですが、元本は1991年出版、中のネタはバブル最盛期からバブル崩壊までの時期とあって、書いて有ることも右往左往のようです。
さすがの著者もこの時期には間違いのないことを言うのは厳しかったのでしょう。
一つ一つを取り上げる勇気もありませんが、最終章の「日本企業の株式配当性向は低すぎるか」についてだけ。
バブル後の株価低迷時に、「日本企業の株式の配当は低すぎるから株価が上がらない」という声が大きく出た時期があったそうです。
配当を高めれば株価も上がると言わんばかりの声も、まったく根拠もない話だったのですが、さすがにこの本でもそれは理屈に合わないと一蹴しています。
株主に対する株の無償交付を求める声もあったとか。
これも無意味だとしていますが、しかしあれもこれも全く自分のためしか考えない連中ばかりが多いことと感嘆させられます。
その後の経済の流れを見る時、昔の本をひっくり返すのも一つの思考のリフレッシュになるかもと思わせるものでした。