爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

政治の不思議 なぜ投票するのか

ノーベル経済学賞受賞のジョセフ・スティグリッツ教授の本を読んで、アメリカの政治と言うものは上位1%の富裕層をさらに豊かにするための政策に邁進しているということがわかりましたが、一番の疑問はなぜそのような政府が選挙を経て政権につけるのかということです。
アメリカの政治では長らく2大政党制が続いており、それ以外の政党はほとんど当選することはできません。したがって、個々の政策すべてに満足できなくても一番関心のある項目でどちらか一つを選んでいるものと想像できます。
その政党が1%の富裕層にもっとも資する政策を行っているとしても、それを避けても似たり寄ったりのもう一つの政党を選ぶしかありません。

これは日本でも似たような状況で、2大政党制にはなかなかなる方向には行きませんがそれでも本当に下層の人々のためになる政策を実施できる政党はないものと見られます。(共産党はそれに一番近いかもしれませんが、共産主義がそれにもっとも有効な政治方法かどうかは疑問があります)

そもそも日本でも政権党が国民の大多数のための政治を本当にやっていたかというと、まったくそれとは違う状況だったと言わざるを得ません。
55年体制で政権を取った自由民主党はその当時は農村地域の農民票を基本に当選していたと考えられ、その後もしばらくはその状況が続きました。しかし、その政策は農業を本当に振興するというものではなく、米価安定と少しばかりの補助金だけを与え、もっとも力を入れていたのは農民を都会に呼び込み工業などの第2,3次産業へ就業させるという施策であったと言えます。その結果、農業は見事なまでに疲弊し見る影もありません。
その後、自民党の支持層も相当変化していますが、いまだにその層のための政策をやっているとも言えない状況であるのは変わりないようです。
公平のために言うならば、これは自民党ばかりではなく他の政党も似たり寄ったりであると思います。野党は政権政党ではありませんがその活動が投票した有権者のためのものかどうか、極めて疑問に思います。これは政権を持たないから実現できないと言う意味ではなく、政策そのものがたとえ実現したとしても投票者の利益につながらないということです。

具体的に言うならば、現在の日本の政党では与野党を問わず「非正規労働者」の人々のための政策を主要な主張として唱えているものはありません。ついでのように最低賃金の引き上げとか正規雇用への転換などと言っているところはあるかもしれませんが。
また、「年金受給者」のための政策を打ち出しているところもありません。こういった主張を第一にする政党があっても良さそうなものなのですが。

こういった中下層の人々を主要な支持者とする政党がもし生まれればすぐにでも政権が取れるでしょうか。これはかなり難しいことになりそうです。
非正規労働者の解消という問題だけを取り上げてもその対策は数多くのものが考えられます。とても一つにまとまるわけもありません。
また、国政というものは一つだけの要素では動かせません。小泉が郵政民営化選挙というものを行いましたが、これもその他の政策はこれまでどおりという暗黙の了解があったからこそ成り立つのであって、他のことはどうするのか分からないという政党には怖くて票が入れられないでしょう。しかし、たとえ雇用問題だけは一つにまとまったとしても、それ以外の政策は千差万別のものになるのは目に見えています。いくら雇用問題が大切であってもそれを中心に据えた新政党というものはどれだけ待ってもできないでしょう。

中下層の人々の願いをかなえる手段というのは、実は現政権党にその政策を取ってもらうように働きかけることしかないのかも知れません。しかし、明らかに上層階級への奉仕をするような政策ばかり取っている政権党が思い直すことはあるでしょうか。

通常の政治手法だけでは、中下層の人々のためになるような政策を展開させる方法というのは百年待っても実現はできないかもしれません。