爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「反貧困の学校2」宇都宮健児、湯浅誠編

5年ほど前にアメリカのリーマンショックなどのあおりを受け日本でも不況が悪化し、派遣社員が解雇され路頭に迷った人々を救うために「派遣村」という活動が行われたということがありました。
これはその時期に派遣社員などの雇用に関する問題点についてシンポジウムや討論会が行われたものをまとめたものです。

編者の宇都宮健児さんは反貧困ネットワークの代表としてこれらの活動を主催してこられました。言わずと知れた先の東京都知事選で惜しくも破れた方です。反貧困の活動など知るほどにもしも都知事に選ばれたらと嘆きたくなります。しかし、まあ現在の東京都民には宇都宮都知事はふさわしくないでしょう。

さて、2008年当時に派遣切りで一気に問題が表面化したような雇用状況ですが、実は1985年の男女雇用機会均等法と時を同じくして施行された労働者派遣法から雇用者保護の破壊が始まっていたそうです。この辺のところは私もはっきりは認識していませんでしたが、たしかにそういわれてみれば思い当たります。
1985年当時は女性労働者でも70%が正社員であったそうです。しかし、当時の派遣法で「専門技術職に限る」とされた派遣労働ですが、実態はOA機器操作とかファイリングなど普通に当時の女性労働者が正社員としてやっていた業務であり、それを口実に派遣社員との置き換えが始まりました。最初はそこそこ高給であったために、希望して派遣社員となる人も居たそうですが、正社員の置き換えが完了してしまうと派遣社員の給与の引き下げがどんどんと進み、現在のような状況になってきたそうです。
さらに、女性ばかりでなく男性にも派遣化が進み、否応なしに派遣社員に置き換えるということになってしまいました。今はどこでも派遣とアルバイトがほとんどで、正社員は責任者一人だけというところが珍しくありません。ひどいところでは責任者もパートということもあり、安い給与で責任ばかり負わされるということになっています。

少しでも働く人々自身に考えてもらうということで、アルバイトをしている高校生に労働者の権利ということを教える場も設けているそうです。実際にアルバイトをしている高校生がどれだけ労働法を無視された環境にいるのか、知ってもらうことから始めるということですが、労働実態を見るとひどいものです。本人たちも始めて知ることばかりのようです。

これでも世界の中にはさらにひどい労働環境の国が多いのでしょうが、労働者の環境はそこに下がっていき、経営者や投資家の利益はアメリカなどのレベルに上がっていくのがグローバル化なのでしょうか。人類全体が破滅に向かっているというのが良く分かる話です。