地形学や地質学というものに興味をひかれ色々な本を読んできましたが、その中に収められている写真や図といったものの出来がどうも今一つといったもののように感じていました。
現場の写真そのままでは、地形の面白さがよく分かりません。
写真はあまりにも情報量が多すぎ、肝心の地形のポイントというものがどうしてもはっきりとは伝えられなくなります。
また地上からの写真では地形の特徴などがはっきりと示されず、地形学の観点からはあまり有効ではありません。
かといって航空写真は平板になってしまい、何を言いたいのかも分からなくなります。
その点、著者が自分で描いた図を載せるのはそれと比べれば少しマシと言えるかもしれませんが、どうしても形をデフォルメし強調するところを拡大するといった処理をしてしまうので、本当の姿はどういうものなのという疑問が付きまといます。
その点をこの本ではいろいろな工夫をして解消しようと努力しています。
その主体となったのが、衛星画像(Maxer社)とそれを使った3次元モデリング技術(NTTとリモートセンシング技術センター)、さらには米国Autodesk社のInfraworksという3次元計測モデルと使った画像でリアルでありながら地形の特色などを主張することのできるものとなっています。
その技術を用い、海の地形、川の地形、火山といった自然地形ばかりでなく、農業景観、人工改変地と言った人間の活動で生まれた「宇宙からも見える」ような景観まで描いたものとなっています。
多島海と言われる地形は世界各地にあり、日本でも宮城県の松島はそれで有名ですが、この本に示されていたのがフィンランド南西部。
トゥルクという都市の沿岸に広がる多島海は数え方にもよりますが、5万から18万と言われるほどの小さな島々が散らばっています。
これは前の氷河期に巨大な氷床に覆われていたものが徐々に溶けていった時に浸食されてできた地形だとか。
大きな河川が海に注ぐ場所にできる三角州、デルタと言いますが、かつては広島市が太田川のデルタと呼ばれていましたがすでに原型は無くなってしまいました。
他にも多摩川、江戸川、淀川、武庫川などもきれいなデルタがあったものの、都市化が激しい場所でもありすでに明治期から埋立が進み原型をとどめていません。
三角州がきれいに形成される条件としては、河川の土砂供給が豊富、河口付近の海が浅いということの他に、沿岸流が弱いことというのも重要です。
その点、琵琶湖の安曇川河口のデルタは現在でもきれいな形を保っているとのことです。
有明海は干満の差が大きいことで知られていますが、それに面した佐賀平野には水田の中に張り巡らされたクリークが多数あります。
クリークといっても河川の淡水が大量に流れてくるわけではなく、海水が満潮時には押し寄せてきます。
水田に海水を入れるわけには行かないのですが、淡水は入れたい。
それを充たすために、かつては海水と混じらないままその上部にあった淡水を満潮時にに水田に導きいれるということが行われていました。
月に2回だけの大潮の時に海水の上に積み重なった淡水(とはいえ少しは塩分を含む)を水田に引き込むのですが、水をひしゃくに取り味を見ながら淡水だけを入れるといった苦労をしたそうです。
岡山県の児島湾干拓地の上空からの映像は、思わず目を疑うようなものでした。
干拓地ですのでたいていは長方形や正方形に区切られた水田が並んでいるはずですが、岡山市から倉敷市にかけてのこの地域には菱形に区切られた場所があります。
江戸時代に進められた干拓の際に、海と陸の境が河川の線と53度の角度になっていたためにこうなったということです。
生活にもかなり不都合があるようで、家を建てる場合にも無駄が出るとか、交差点を車が曲がりにくいといったことがあるようです。
なかなか見られなかった面白い光景が並んでいました。
