ここでいう「長期腐敗体制」はもちろん安倍政権とその後の菅・岸田とつながる政権のことを指し、すでにそれが「体制」といえるほどのものになっていると見ています。
白井さんはこれまでも「永続敗戦論」などの戦後日本の政治を掘り下げる著書を書いており、嫌われる人からは徹底的に嫌われているようですが、その主張には多くの真実があると感じます。
なお、安倍体制について語るにはどうしてもあの暗殺事件が関わってきますが、本書刊行は2022年6月、あとがきにも「本書が書店に並ぶのは参院選挙が迫る時期だ」とあります。
まさかその参院選挙の運動中に暗殺ということが起きるとは想像もできなかったことでしょう。
しかしその後石破が首相となるもののわずか1年で退き、安倍体制をさらに増強するかのような高市内閣となってしまいました。
白井さんもその後の政治については色々と考えているでしょう。
本書内容は書かれた2022年当時の政治状況をもとに書かれていますが、安倍体制で政治に深く浸透した腐敗の色は安倍退陣以降も全く変わらず、モリカケ、桜等のスキャンダルも何の追及もされないままでした。
これらの状況を著者は「統治崩壊」と見ます。
安倍が首相に返り咲いた2012年以降を著者は「2012年体制」と呼びます。
それは菅・岸田になっても続いているということです。
いずれも「不正で無能で腐敗している政権」です。
それをはっきりと示したのがコロナ禍対策でした。
日本の対策総額は2兆ドル以上、世界第二位の規模でした。
しかしそれを何に使ったかというとはっきりしません。
多くが誰かのポケットに入ってしまったのではないかという疑いが強くあります。
このような腐敗体制は東京オリンピックでもはっきりと表れました。
ここで話は戦後の日本の政治体制を振り返ります。
55年体制という摩訶不思議な体制が延々と続きましたが、対米従属の自民党と当時は冷戦の相手方であったソ連を支持する社会党が3対1で併存するというのは変な事態だったようです。
それも対東側の最前線は韓国に任せておいてその後方で経済振興だけをやっていればよかった状況だったからでしょう。
それがソ連崩壊から始まる世界の秩序変更の中で経済力だけが強くなった日本を抑えようという動きも強まり、それにも関わらず米国追従は変わらないという状況が続きます。
そんな中で自民党支配はいったんは崩れますが、復活して出来上がったのがさらに悪辣な2012年体制だったということです。
第2章は2012年体制の経済政策について扱います。
いわゆる「アベノミクス」ですが、その実態についてはあまり理解されていないようです。
異次元金融緩和などと言われましたが、結局はマネタリーベースが激増しただけで何も起こりませんでした。
金が溢れるほど供給されたのに当時は物価高騰が起きませんでした。
実は日銀が市中銀行が保有する国債を大量に買ったのにその金は日銀当座預金に積みあがっただけでした。
銀行は金が多く入ればそれを貸し出して利息を取ろうとします。
しかし貸し出す相手が全く増えなかった。
ただし為替相場の操作にはなっていたようで、円安が進行し輸出業の大企業は潤います。それが好景気かのように感じられたのでしょう。
本書執筆の2022年当時にはすでにウクライナ紛争が始まり物価高は海外から押し寄せつつありました。
円安状況は変わらないまま物価高となればスタグフレーションとなります。
危機に直面しているというところで記述が終わりますが、その後はまさにその通りの展開となっています。
2012年体制の外交戦略についても記述されています。
何か安倍が外交上手のようなイメージが広められていますが、とんでもないことで、無責任でカッコつけだけのものでした。
すでに安倍在任中に中国の経済発展からくる圧力増加は歴然でしたが、いったんは国賓として習近平を招くなどと言うこともやろうとしました。コロナ禍でつぶれました。
そうなって彼が何をしたかというと、「一の子分となった高市早苗とともに台湾有事の危機を喧伝して岸田政権に圧力をかけた」ということです。
高市が今やっていることはまさに安倍の遺言通りなのでしょう。
このような腐敗体制ですが、それは政治家を批判するだけでは終わりません。
そんな政権をなぜ有権者は支持し続けたのか。
アメリカの大学のチームが日本の各政党の政策を提示しそれを有権者がどの程度支持するかを調査したそうです。
政党名を出さずに政策だけを示したところ自民党の政策は不人気で、共産党などの政策が人気でした。
そしてランダムに作成した政策に「自民党」とラベルを付けて示したら多くの被験者がそれを支持しました。
つまり、政策の中身など関係なしに自民党であれば支持という層がかなりいるということです。
さらに維新の会も支持率を上げていましたがその政策はお粗末なものです。
しかし単に代表がメディアにしょっちゅう顔を出し、何かやってますというポーズを示しただけで支持率は上がりました。
結局、日本の政治は愚民を適当にごまかして票をとれば後は好き勝手にできるということでしょうか。
こういった愚民政策はすでに小泉内閣から大きな動きを見せていました。
ある広告会社が作成した資料では「IQが低くかつ小泉構造改革を何となく支持する層」の心を掴めということが書いてあったそうです。
安倍内閣を支持した人々も本当は安倍を信頼などしていなかったということです。
2012年体制を支えてきたものは「完成されたシニシズム」だということです。
真剣に考えるべきことなのでしょう。
