爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「『ふつう』という檻 発達障害から見る日本の実像」信濃毎日新聞編集局

発達障害というものが広く認知されるようになったためか、そう診断される人が増え続けているようです。

しかしその対応はまだまだ進まず、また周囲の偏見や誤った対応も無くならないため、困難な状況に落とされる人そして家族が数多くいます。

そういった人々の状況について、信濃毎日新聞社では2023年の1月から7月にかけて長期のキャンペーン報道、「ふつうってなんですか 発達障害と社会」を実施しました。

そこでは数多くの人々に取材して記事としたのですが、それらをまとめさらに加筆してこの本としたものです。

 

章別に主題を変えて、その内容に沿った実例をあてはめていったようです。

第1章、傷つけられる子どもたち、第2章「早期発見」の現場、第3章インクルーシブ教育の虚実、第4章民間参入の光と影、第5章生きる道を探して、第6章この社会での「自立」、第7章「聴く」ことの希望、という章題です。

さらに記事掲載後に新聞社に寄せられた意見を最後に「読者の声から見える社会」として掲載されています。

 

発達障害については徐々に知られるようにはなっているとはいえ、その対処は難しく、また全くそういった知識が無い人たちが教員や役所の係員となっている場合も多く、不適切な行動で当人がさらに傷つくといったことが頻発しているようです。

そういった実例が次々と取り上げられています。

 

文科省の調査では、2022年に公立小中学校の通常学級に発達障害の可能性のある子供が8.8%在籍しているとしています。

これは10年前より2.3ポイントの増加です。

しかも公立小中学校では特別支援学級が増え、学級数から見ると全体の2割を占めるようになっていることを考えると様々の面で学習や行動に困難がある子供はもっと多いことになります。

これらの状況に対処するには教員数が圧倒的に不足しているということです。

 

障害児が放課後に通う施設である、放課後等デイサービスは2012年にスタートしました。

その数はどんどんと増えています。

しかしこれを儲けやすい事業と捉えて参入する業者、そしてそれを勧誘する業者が増え、補助金の不正受給、参入したもののすぐにつぶれて通っていた子供が急に行く先を失う事態になるなどの問題が頻発しています。

悪質な業者も散見されるようです。

 

「ふつう」であることを強要されるようなことが行われているのが教育現場、そして社会一般ですが、そこについていけない人が多数いるということです。

しかもどうやら高度情報化時代となることで、「ふつう」のレベルもかなり上がっているようです。

昔であれば、それなりに従事することができる仕事もあり、居場所が見つけられた人たちもそれが不可能になってしまいます。

そういった人々をはじき出すことだけしかできないのか。

本人や家族の苦悩は続きそうです。