「実際に使用された言語の例を大量に集積したもの」をコーパスと呼ぶそうですが、最近ではコンピュータの利用でそのデータを非常に多量に集めているそうです。
英語などの例が多いようですが、日本語でもコーパスという言葉は使わなくても集積する活動が行われているようです。
しかし、この本は1984年の出版、この本に先んじて書かれた「現代米語コーパス辞典」はそれ以前の出版ですから、おそらくコンピュータ利用はされていないでしょう。
しかも著者の坂下さんはそれ以前にアメリカでビジネスマンとして活躍されていたということですから、あくまでも仕事の合間の趣味として言葉の使用例を蒐集していたということでしょうか。
本書で説明されている言葉の使用例はタイム、フォーチュンというアメリカの本の1982年から83年までのものということですが、その言葉の由来から先行する使用例までイギリスのエリザベス朝のものから、アメリカでは建国の頃からマークトウェインなどなど、その知識の集積は大変なものと思います。
「普通の辞書には載っていない」などという言葉が頻出しており、ならどこでそれを見たのか、気の遠くなるような読書の積み重ねがあったものと思います。
1982年といえばアメリカ大統領はレーガンがカーターに代わって就任してすぐの頃です。
タイム誌などにも大統領の言葉というものが引かれていることが多いのですが、その言葉の選択から使用法まで非常に高い教養のもとに語られていたことが多いようです。
最近の大統領の言葉というものが(特に先代は)非常に乱雑で幼稚な感じがしますが、その点でもアメリカは日本に先行しているのでしょうか。
とにかく膨大な知識の集積という本ですので、まあ現代米語に関心のある方は読んでも損はないものでしょう。
ただし、さすがに「現代」とは言い辛くなった時代のものですが。