ウクライナ東部のルハンスク州やドネツク州でロシアへの併合の可否を問う住民投票が開始されたとの報道です。
欧米諸国や国連は非難をしていますが、ロシアはこれでロシア領となれば東部諸州への攻撃はロシア攻撃と見なすと脅しています。
数日前にすでに書きましたが、この東部諸州の住民はロシア系とウクライナ系が半数ずつを占めるという構成だということです。
しかしロシア軍の占領下、ロシア系住民の主導による選挙であれば賛成多数となるのでしょう。
さらにSNSへの投稿ではロシア系住民に銃を持ったロシア兵らしき者が一緒に住民を訪れて投票を促すという光景も見えていますので、さらに投票結果は見えていると言えます。
ただし、SNSの内容が事実かどうかは全く分かりませんし、どの報道が真実に近いのかも分かりません。
そもそも国のある地域の独立(他国への併合も含む)を求めるということが住民投票で決めることができるのかどうかも疑問です。
一見民主的な手法の住民投票ですが、国の形自体を決めることがどこまで可能かそう簡単な問題ではないでしょう。
国の一部地域が勝手に独立するという小説はいくつも存在し、井上ひさしの「吉里吉里人」や筒井康隆の「東海道戦争」など、状況は少し違うかもしれませんが、国全体を巻き込む騒動どして描かれています。
今回の場合は隣国である超大国ロシアの意によるというのは全く異なりますが、焦点はやはりその地域の住民だけで帰属を決めるということでしょう。
たとえば隣り合った州の住民には賛否を問わなくていいのか。
さらに別に隣り合っていなくても他のウクライナ各州の住民(たとえはるか離れた西部の諸州であっても)は意見が言えないのか。
まあ、この辺は他の地域のわがままな圧力で一地域のみ過大な負担を負わされることを誰が決められるかという問題も出てきますが。(もちろん日本の沖縄問題が頭にあります)
中世から近世にかけて帝国と呼ばれる大きな国々が存在しました。
そのすべてが同様かは分かりませんが、その中には内部に民族対立などはなかったということです。
別に良い状況だったということではなく、すべての民族を皇帝が圧政下に置いていたというだけのことかもしれませんが。
しかし帝国というものの存在を民族主義がどんどんと崩し、国民国家というものがそれを分割していきました。
一国一民族でまとまればまだ良いのかもしれませんが、ただし民族というもの自体はっきりしたものではなく、いまだにどの国にも民族問題が存在するようです。
民族というものが人種だというのは全くの虚像のようですが、少しばかり血統が違うだけでも別だと称するものもあり、言葉が違えば別、宗教が違えば別などなど。
「東海道戦争」の事情を借りれば「わてら、言葉がかなり違いますやろ、関東の連中とは別民族ということにしまへんか。」といった論理も成り立ちかねず、実際にその程度の民族もあるのではないかと思います。
ちょっと話の筋がずれてしまいましたが、いずれにせよこの住民投票はほどなく終わり、東部諸州はロシア併合となるでしょう。
それでも事態は少しも変わらず、ウクライナ軍は東部への攻撃を続けるでしょうし、それが「ロシア本体への攻撃と見なす」などと言われても戦争をやっていることには変わりなく、大した変化もありません。
ロシア国内でも反戦ムードが増しているという報道ですが、これも実際どうなのかは不明です。
しかしすでに一部の推測では数万人の戦死者を出し、さらに数十万の予備役を徴兵して投入すればさらに戦死者は増えるでしょう。
いつまでプーチンの強気が続くかは分かりません。
どうも「ロシアが追い詰められている」という報道の方が真実に近く見えてきます。