爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学」ランドール・マンロー著

かつてはNASAのロボット技術者だったがその後著述業に転進したという著者が、暮らしの様々な要望に対し、非常に壮大で科学的な解決策を提示します。

ただし、そんな解決策はほぼ不可能ですしやったら大変なことになる場合も多そうです。

 

暮らしの要望自体は非常にありふれたものです。

引越しの手間を減らすには?、スマホの自撮りが上手くなるには?、明日の天気が知りたい、約束の時間が守れなくて困っています。

などなど、普通のものですが、それに対する回答が想像を絶するものとなっています。

 

小包を送るには(ただし宇宙から)という要望について、一番普通なのは(どこが普通だか)地上への回収が必要なものに使われる着陸装置に載せるというものですが、これは到着までわずか45分しかかかりませんがただし価格が7000万ドルかかります。

その次の優先便は連絡用に行き来しているソユーズ宇宙船の来るのを待ってそれに載せて地上に持って行ってもらうもの。輸送費は20万ドル。

そして「エコノミー便」というのがそのまま船外に放り出し自然に落ちるのを待つというものです。

国際宇宙ステーションは宇宙とはいえわずかに空気が存在するために徐々にその摩擦で荷物は落下していきやがて大気圏に突入します。

問題点はその大気の抵抗でほぼ燃え尽きてしまうということで何も残らないということになりそうです。

 

といった調子で非常に真面目に科学的な回答をするものの、絶対に真似ができないということになっています。

 

飛行機の操縦中にトラブルが発生し緊急着陸をしなければならない時にはどうするか。

この問題には専門家として宇宙飛行士の経験があるテストパイロットのクリス・ハドフィールド氏にアドバイスをお願いしたところ快諾されたので色々な状態の場合ごとにその対処方法を教えてもらっています。

しかし、その「色々な状態」というのが馬鹿馬鹿しいほどのものであり、よくハドフィールド氏がまともに答えたと感心しますが、やはり専門家というものはどんな状態に対してもその対応を考えておくものだということでしょう。

その状態というのが「畑に緊急着陸」「スキーのジャンプ台に」「航空母艦に」「列車の上に」「ロサンゼルスの街中に」等々

スペースシャトルをロサンゼルスの街中に緊急着陸させる」という問題の回答には、ハドフィールド氏は「私たちは世界中のすべての滑走路を把握しておりその向きや長さもシャトル内にデータとして保存していた」としています。

ただし、「ロサンゼルスの街中」というのはちょっと苦しい条件のようで、スペースシャトルの着陸には4500m以上の直線の滑走路が必要なため、ロサンゼルスにその条件の場所があるかどうかは知らないということでした。

 

「約束の時間を守るには」は、通常は1速く移動する、2早く出発するのいずれかでしょうが、これに著者は3「時間の流れを変える」を付け加えます。

「約束の時間」が迫ってくるのは通常の時間の流れの場合であり、それを変えてしまえば余裕ができるということです。

ただしその方法がすごいもので、「地球の自転速度を変えて一日の長さを変える」ということで、そのためには月の潮汐力を変えてしまう、などと言う壮大な努力が必要となります。

 

まあ、実際の役には立ちませんが、読んで少しニヤリとできるかもしれません。