爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「無国籍と複数国籍」陳天璽著

著者の陳さん、名前は難しいですが愛称はララさんということですが、現在は大学教授の傍らNPO法人無国籍ネットワークというところの代表理事をなさっているそうです。

陳さん自身、中国出身のご両親が横浜中華街にやってきてから生まれた日本生まれですが、台湾の中華民国の国籍であったために1972年の中華人民共和国との国交回復と中華民国との国交断絶によって無国籍となってしまいます。

無国籍でも日本永住の権利はあるのですが、外国に出ることが非常に難しくなってしまいます。

それでも親戚が海外あちこちにいるためにそれを訪ねる旅行をしていたのですが、最悪の場合入国拒否や送還といった目にあってしまいます。

このような目に会いかねない無国籍者が全世界で1000万人以上いるそうです。

 

一方、国際結婚などで2か国以上の国籍を持つ複数国籍者という人たちも多数に上ります。

こういった人たちは無国籍者と比べれば良いようにも思いますが、日本などでは一つの国籍しか認めないという方針を取っているためその間で苦しむ人が多いようです。

しかも国によって規定が違い取り扱いの方法も異なり、さらに担当者がそれを知らないといった事態も良くあるようで、間違った処分をされて国籍を失うといったこともあるようです。

 

陳さんはNPO法人で活動していますので、多くの人達からの相談を受けて何とか解決しようとがんばっています。

それでも法律と官僚の壁でどうしようもないということが多いようです。

そのようなケースの紹介も具体的に書かれていますが、気の毒な状態に陥ることがよくあるようです。

ベトナム難民やロヒンギャ、そういった難民と言う人たちはすでに本国では国籍が抹消され政府も相手にしてくれません。

それでも日本に入るには国籍がなくパスポートも持っていないということで拒絶されるという事態になります。

それを何とか受け入れるのが難民対応のはずなのですが、難民受け入れを事実上拒否している日本はそういう態度を取ります。

 

硬直し冷酷な対応をするのは日本の役所の典型的な姿勢かと思うと、どうやら他の国でも似たようなもののようで、どこに行っても苦労する人たちが多いようです。

海外からの人々に冷淡なのは日本以上だというのが韓国のようで、華僑の人々も韓国居住をあきらめてまだマシな日本にやってくることもあったようです。

 

複数国籍は認めている国も多いのですが、日本は頑なに拒絶しており一つの国籍を選んでそれ以外は捨てさせます。

父母の国籍が違いそれで複数国籍を持つ人にとってはそれは父か母を選んでもう一方は捨てろと言わんばかりのことだと感じ、抵抗を感じるようです。

 

日本に生まれ育った日本人にとっては国籍というものは日本一つだけというのが普通のように思うところなのでしょうが、そうではない人が多いということは知っていなければいけないことなのでしょう。

ただし、難民やそれに近い状況の人達を特に苦しめるような処置はすぐにでも改善しなければならないと感じました。