著者の野村さんは作家ですが、子どもの頃からの鉄道ファン。
それを口にしていたら民営鉄道協会というところから広報誌への執筆を依頼されてしまいました。
そういう事情なので普通では入ることのできない場所での取材もOKということになり、様々な状況を実際に見聞することができました。
なお、以前は「私鉄」と言っていたのですが、最近では国鉄もJR化したということで、民営鉄道、略して民鉄と呼ぶそうです。
一般人はなかなか見ることができないと言えば、新造車両の搬入、夜間の保線作業、そして大規模な路線の切替工事があるでしょう。
どれも昼間に行なうことはできないので、列車の運行が終わった後に始めて始発電車の出発までに終わらせます。
当然ながら危険が伴いますので、関係者以外は立ち入り禁止となりますが、そこは民鉄協会から依頼の取材ということで堂々と案内付きで立ち会うことができました。
東急の目黒線は目黒駅から大岡山を通り田園調布から東横線に乗り入れて日吉まで運行していますが、かつては平面路線で住宅の間をすり抜けるような環境で、踏切も多いという状況でした。
これを地下化するという大工事が実施され、最後に路線切替工事が行われたのが2006年の7月1日の深夜から2日朝までの時間でした。
新しい線路も離れて作るような余地もなく、従来の線路の真下に作らざるを得なくなり、「直下地下切替工法」という難しい工事を実施しました。
列車はダイヤ通りに運行させるため、終電から始発までの間のわずか4時間の間に全ての工事を終え、試運転列車まで走らせるというものです。
集合した作業者は2千数百人、それぞれが役割を熟知したプロばかり。
一斉に取り掛かり流れるような作業で時間通りに全て終了し運行開始したそうです。
事故や災害などの発生にそなえ、鉄道各社は異常事態想定訓練というものを実施しています。
これも部外者は見ることは難しいものです。
東京メトロの有楽町線では飯田橋駅近くにかつては検車区として使われていた引き上げ線があるのですが、これを現在は訓練線として使用しています。
ここは営業線とは別ですので通常の時間内に訓練できます。
直下地震で列車にも被害が出たという想定の下、旅客の誘導、初期消火、けが人の救出等を行い、その後はさらに脱線車両の復旧までしてしまうという訓練内容になっています。
これを何度も繰り返すことでもしもの時にも対応が可能となるのでしょう。
私も鉄道ファンの端くれとして、見てみたい内容でした。