このブログを始めた初期に梶尾さんの本は集中的に読んで読書記録を書いていますが、この本は抜けていたようです。
表題作の「もう一人のチャーリィ・ゴードン」、「チャーリィ・ゴードン」とは言うまでもなくダニエル・キイスが1959年に発表した「アルジャーノンに花束を」の登場人物であり、その設定をそのまま借りて書かれたものですが、梶尾さんらしい雰囲気を十分に持たせたものとなっています。
「清太郎出初式」という作品もそのシチュエーションはオーソン・ウェルズの「宇宙戦争」をそのまま使いながら、著者在住の熊本市に舞台を移しそこに住む人間も完全に明治の熊本に沿ったものとし、巧みに作り上げたものとなっています。
最後の「百光年ハネムーン」は実はSFマガジン誌の1980年2月号に初出なのですが、その号は発売直後に読んでおり、知っていたあらすじですが、やはり改めて読んでも感動させられてしまうものとなっています。
梶尾さんは「黄泉がえり」などの映画の原作者としても知られていますが、短篇でも映像化したものを見たいと思わせるものが多いと感じます。
おそらく、ご自身が執筆の際から意識されていたのではと思います。