お笑いというものがテレビで大きな存在感を示し、お笑い番組だけでなく報道番組にも芸人が出てくるという時代になっていますが、そのようなテレビのお笑いというものを社会学的に解析したものです。
著者の太田さんはテレビ論が専門の社会学者ということですが、テレビ番組の隅々まで詳しく、よほどその視聴には時間をかけてこられたようにお見受けします。
この本では1980年代に起きたマンザイブームの直前から論を進め、そのマンザイ自体も性格を大きく変えながら、さらにテレビ界全体を巻き込んでお笑い大国を作り上げている状態まで詳述していきます。
第1章マンザイ的「笑い」の誕生、では1980年代からのマンザイブームについて
第2章「仲間」空間と「笑い」、ではそれまでのマンザイの主要な性格を形作ってきた「ボケ」と「ツッコミ」という役割の変質と解体、そして芸人の「キャラ」が大きくクローズアップされていく段階について、
第3章「笑い」が「感動」に変わるとき、では「どっきりカメラ」といったバラエティーの流行と変質、そして「24時間テレビ」
第4章現代日本社会と「笑い」では、その後の再び訪れた漫才ブームなど。
終章「笑う社会」の行方
と時代をたどりながら「お笑い」の変遷をつづっていきます。
どうも私は寄席芸としての落語や漫才といったものは楽しめますが、漫才がカタカナになったあたりからはあまり引き込まれることもなかったために、本書の内容が少しわかりにくいと感じられるようなものでした。
お笑いにのめり込んだという人ならばもっと鮮明にこの本の記述を理解できたでしょう。
そういった方にはお薦めかもしれません。
ただし、文章はあくまでも社会学者らしい学術的、解析的なもので、慣れていないと少し読みづらいものでしょう。
なお、すべての文章において芸人の氏名、番組の名称(最初に正式名称をあげ、その後は略称を示す。 たとえば、「フジテレビ『森田一義アワー笑っていいとも!』以下『いいとも』と略記」といった調子です)も明記されており、分かっている人には非常に分かりやすいものとなっています。
まあさほど悪いことは書かれていないようですので、この本での表記をめぐってモデルとなった人々や番組からの提訴といった事態にはなりそうもありません。
まあ確かに世相というものを作り上げている大きな一つの側面ではあるのでしょう。
しかし、現在の「ワイドショーも芸人が取り仕切っている」状況についてそれほど良くは思っていない人にとっては(つまり私)あまり楽しめるものではなかったかもしれません。