題名はこうなっていますが、コロナウイルス感染流行という事態について語ったというわけではなく、多くは著者の様々な方向の持論を展開していき、そこにコロナ禍も当てはめたという印象です。
書名でコロナ禍ニュース的なものを想像して買った方が居ればちょっと期待外れかもしれません。
もちろん私は図書館で借りて読んでいますので実害はほとんどありませんが。
著者の安田さんは社会評論家と称していますが、老人医療や介護の問題に多く触れていますのでそちらが専門かもしれません。
しかし、その他の方面についてもバッタバッタと言葉を投げつけて切り捨てるという雰囲気の強い文章です。
ちょっと乱暴なと感じる部分もあちこちに見られるようです。
医療崩壊を防ぐためには各地に先端医療を行なう重症者専用の超大型の救急病院を作ることだそうです。
しかしそのような地域の国立病院と言った大型病院はどんどんと廃止されてきているという現実があり、それは普段は使い道がなく膨大な費用がかかるためです。
そのような社会的費用を当然のものとして受け入れるような社会通念があるかどうか。
今は無いでしょう。
グローバル化に向け英語教育が問題となっていますが、それは学校で外国人教師に数学や理科社会などの教科を英語で教えてもらえばよいのだそうです。
かといって全部をそれに置き換えるのではなく、日本語でも行った内容を英語でもやってもらえば子供も理解できるとか。
これもちょっと乱暴すぎる意見でしょう。
時間を考えればそのような重複内容を実施するのは不可能です。
全ての教科を最初から英語で行なえば英語はうまくなるでしょうが、それは植民地の状況でしょう。
生活保護世帯の子どもなどの教育格差については、国家資格や免許を取れるようにして自立を計るというのは良い考えかもしれません。
大型自動車免許はまあ良いとして、飛行機操縦免許、看護師免許、保育士免許とまでいくとちょっと実現性が無くなるかもしれませんが。
老人医療、介護施設といったものはどうやら著者が非常に詳しい分野らしく、その記述もしっかりしていると感じます。
老人医療の医療費がかかりすぎるからということで、療養型病床というものの削減をどんどんと進めてしまいました。
そのため、家族に介護できる人がいない場合はもう行き場を失うということになりました。
介護施設も入居待ちがひどく待っている間に命が尽きそうです。
老人ホームなどは「介護ビジネス」と言われているように、利益優先です。
手のかかる人などは断られ、おとなしくて手のかからない人だけを入れたがります。
そういった人でも体が動かなくなれば放り出されます。
このような老人問題は地方のもののように思われてきましたが、これからは東京など都会の問題となりそれが急速に進むでしょう。
そうなれば都会では土地の確保すら難しく必要数にはほど遠いことになります。
地域の差を乗り越え、東京の場合でも区ごとに地方に老人施設を設けるといった対処を早く考えていかなければならないかもしれません。
日本はこのような社会保障へ金をかけるということが無く、個人で金を貯めておけなどというバカなことを言っています。
北欧では老後の生活に心配がないため若いうちから金を貯めていく必要もなく、どんどんと使っていくので経済の循環も動きます。
日本のように老後に備えて金を貯めるだけ、(その大半は無駄になるようです)それでは動きようもないでしょう。
まあいささか乱暴に聞こえる議論ですが、中には所々に光るところが見られました。