爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「昭和史の10大事件」半藤一利、宮部みゆき著

半藤さんは昭和史を追い続けてきた方、そして宮部さんは作家ですが2・26事件を題材とした小説を書くといったことで、昭和史については色々と調査をされたようです。

そのようなお二人が「昭和史10大事件」を選び、それについて様々な方向から対談をするという企画です。

なお、お二人には30年の年齢差があるのですが、都立隅田川高校(もちろん半藤さんはその前身の都立7中)の卒業という、先輩後輩の関係だということです。

 

対談に先立ち、それぞれが「10大事件」を選び持ち寄ったのですが、さすがに相当な違いがあるとうのは、年代の差が大きいのでしょう。

その中から10を選び対談の題目として話を進めていきました。

 

いちおうその10題について項目名だけ挙げておきます。

昭和金融恐慌

2二二六事件

大政翼賛会三国同盟

東京裁判と戦後改革

憲法第9条

6日本初のヌードショー

金閣寺焼失とヘルシンキ・オリンピック挑戦

8第5福竜丸事件と「ゴジラ

9高度経済成長と事件 公害問題・安保騒動・新幹線開業

10東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤事件)

 

私も生まれたのが8番目ゴジラの上映と同じ年ですから、その後しか知らないわけで、昭和のほとんどの大事件は後から聞いただけですが。

 

半藤さんも生まれは昭和5年ですから、戦前の話は後からの取材や調査で知ったことが多いのでしょうが、それにしても詳しい話、あまり世間には知られていない話に通じていることはさすがです。

しかし宮部さんも相当な取材をしているようで、決して半藤さんにひけはとらないように見受けました。

 

昭和金融恐慌というのは、昭和になってすぐの年、昭和2年に起こりました。

大正天皇が亡くなり昭和になったのが大正15年12月なので昭和元年は1週間しかなかったのですが、それが明けた昭和二年は希望にあふれた時代になるかのように新聞には書かれていたそうです。

しかし間もなく大変な事態となりました。

金融恐慌といえば議会で大蔵大臣が失言し、渡辺銀行が取り付け騒ぎに巻き込まれたという事件は知識がありましたが、実際にはそれだけではなく多くの金融機関が破綻したのだそうです。

3月14日に片岡大蔵大臣が議会で失言、翌日から取り付け騒ぎで渡辺銀行は休業したのですが、それだけでなく「あかぢ貯蓄銀行」(しかし大変な名前)も同様に休業から倒産。

ついで19日に中井銀行、22日に村井銀行、中沢銀行、八十四銀行、左右田銀行が休業。

そして当時最大の商社鈴木商店の破綻とつながって行きました。

その後少し持ち直すもののアメリカからの大恐慌、東北地方の冷害凶作も重なり大変な事態となりそこから満州事変につながっていきます。

 

今の国債経済を見ていると、このような時代の再現があるのかもと思うことが必要なのでしょう。

 

第6番「日本初のヌードショー」というのは、他の大事件とはかなり差があるようですが、半藤さんにとっては非常に印象的なことだったようです。

半藤さんは当時旧制高校1年、アルバイトをしてはその金を握りしめて見に行ったそうです。

額縁ショー」という名前だけは聞いたことがありますが、本当にヌードになることはなっても全く動かないものだったそうです。

もちろん、始まってしまえばその後すぐに色々なものが出てきたそうですが。

 

ヘルシンキオリンピック挑戦という話が出てくるのは、実際に半藤さんがボート競技でオリンピック出場なるかどうかというところまで行ったそうです。

当時は東大のボート部の部員で練習に明け暮れていたそうです。

しかしちょうどその頃の朝鮮戦争特需で、コーチをしていた社会人の人も仕事が忙しくなかなかチームの様子を見に来ることもできなかったので、学生だけで練習をしていたそうです。

ところが練習計画など全く立てずにとにかくどんどん漕げばよいということで練習をやり過ぎ、肝心の試合前には疲労しきってガタガタ。

最後の慶応とのレースでは力が切れて最後は逆転負け、まあ慶応は良いものを食べていたのも敗因だったとか。

 

さすがに興味深い話題が次々と続くという、飽きない本でした。