あるところで、太陽光発電を使って電力自給をするシステムについて解説している専門家の記事を見ました。(もう検索不能)
その概略は、太陽光発電のみで電力需要を満たすには蓄電池だけでは不可能。水電解水素製造装置と水素電池を組み合わせた蓄電システムを備えなければならない。
というものでした。
太陽光発電は言うまでもなく晴れた日の日中しか発電することはできません。
その電力だけで24時間の電力使用を賄おうとすれば蓄電装置が不可欠なのですが、蓄電池だけでは不足するということでしょう。
そのため太陽光発電の電力が十分な時に水電気分解で水素を製造しそれを太陽光がない時間帯には水素電池で使って発電するということです。
現在も太陽光発電がどんどんと広がっていますが、その電力の平準化はすべて電力会社に丸投げです。
それがあたかも電力会社の責任のようにされていますが、これも限度があることで既にあちこちで破綻しかけています。
もしも電力会社からの売電なしに太陽光発電だけでやっていこうとすれば、確かに上記のような設備が必要となってくるでしょう。
しかし現状でもこれを実現しようとすれば莫大な設備費がかかってきます。
太陽光発電と蓄電池だけでも相当高価なものですが、それにさらに水電気分解の水素発生装置や水素電池まで備えれば途方もない価格になります。
これは水素関連設備が普及し価格が下がってきたとしてもやはりかなりの高額なものとなるでしょう。
これだけの設備費をどうやって負担するのか。
個人などではほとんど金持ちの道楽でしかできないでしょう。
企業の場合、これが「環境問題やってます」のポーズ作りなら宣伝費から出すという手もあるかもしれませんが、普通の企業会計の範囲で言えば製品価格に全部コストとしてかけなければなりません。
そうでなくても価格競争の対策としてコスト削減で四苦八苦している企業がそのような負担が可能かどうか。
もしも、競争企業のすべてがこのような電力状況であるなら、まだ同一レベルの競争となるかもしれません。
しかし、世界のどこかで「脱炭素化なんて知りません」というところがあればどうなるか。
そういった国では平気で安価な火力発電の電力で企業運営をしていたらどうなるか。
もう全く競争にはなりません。
こういった事例はすでに存在しています。
太陽光発電のパネル製造には大量の電力を必要としていますが、中国はそれを非常にコストの安い石炭火力発電で行なっているために製品価格も安く抑えられ、それで欧米などのライバル企業の製品を駆逐したのだそうです。
これを防ぐためには世界全体で「脱炭素化に取り組まない国は村八分」ということにしなければならないのですが、果たしてできるかどうか。
欧米主導で進めようとしてもどうせ中国あたりが反対して潰れるでしょう。
第三世界の大多数も中国の動きに同調するでしょうが、その結果競争力を失うのは欧米と日本だけになり、それらの国の沈没につながりかねません。
ヨーロッパ各国は脱炭素化に今後日本円換算で数十兆円以上も注ぎ込むと言っています。
これがもしも何も産み出すことなく、単にその競争力を失わせるだけになるとしたら、温暖化防止どころではないでしょう。
自滅プログラムのスタートです。