爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「国語は好きですか」外山滋比古著

外山さんは数年前に亡くなりましたが、英文科卒で英文学者とされていますが、本書の内容を見ると国語(日本語)の方により思い入れが強いようです。

この本は2014年出版ということですから、著者90歳を過ぎてからのものですが、国語というものについてあれこれと思う所を綴っています。

 

扱っているテーマは、主語の問題、縦書き、「読み書き」、言文一致、正書法、敬語、散文など、一つ一つを論じていくとそれぞれが一冊の本になりそうですが、手軽な程度にまとめています。

 

明治時代から公的教育が始まりましたが、その初等教育は「読み書き算盤」という言葉で代表されるものでした。

しかし、その内容はほとんどが「読み」のみであり算盤がちょっと入るものの、「書き」ということはほぼ実施されていなかったし、今でもそうだということです。

「書き方」という授業もありましたが、それは毛筆で字を書く練習だけであり、文章の内容を教えるものではありません。

戦前の教育では文章を書くのは「綴り方」を言われたのですが、その指導などはされることはなく、たまに宿題で「書いてこい」と言われるだけで何も教えられることはありませんでした。

戦後になりアメリカから教育視察団が来日し日本の学校教育を見て驚いたようで、国語教育では「よみ・かき・はなし・きく」の四技能を平行して育成すべしという意見書を出して帰ったのですが、日本の教育行政はこれを全く無視し相変わらず読み方中心の国語教育を続けたそうです。

英語教育では「読む」だけではだめだということで「話し・聞く」ということをやろうという改革を進めようとしていますが、国語教育ではそれらを全く考慮すらしていないのはなぜでしょう。

 

俳句というものは一度は廃れかかったのですが、最近ではまた力を取り戻しているようです。

しかしかつては「俳句は男性的、短歌は女性的」と言われていた時代があったそうで、その当時は俳人はほとんどが男性、歌人は女性も多かったそうです。

ところが最近では女性の俳人というものが増えてきました。

それを見て著者が感じた特徴が「俳句の中に動詞が多くなった」ということだそうです。

以前の男性の俳句は名詞だけが並ぶようなものだったのが、その傾向がかなり変わってきました。

外国に向けて誇ることのできる文化の一つが俳句であると考えるので、より高度なものにしていってほしいということです。