週刊文春のスクープ記事は最近でも「文春砲」などと言われて大きな波紋を作り出すことがありますが、この本はその週刊文春の記者として長年数々の記事を書いてきた中村さんが、その中からいくつかの記事の取材について書いたものです。
中村さんは1995年から2014年までの20年ほどの間、週刊文春の記事を書いてきましたが、その中には「NHKプロデューサー巨額横領事件」や「チャゲ&飛鳥の飛鳥の覚せい剤中毒事件」など、社会に大きな衝撃を与えたスクープ記事もありました。
この2つは中村さん一人で暴き出していったものですが、他にもオウム事件やニューヨークテロ事件など、文春編集部総出で取り組んだ大事件についても書かれています。
そのスクープ手法についても書かれていますが、他の新聞やテレビの取材と違い強力なコネや密接な関係のある中からの取材とは異なり、あくまでも個人的な関係を大切にしながら社会の動きの中でちょっと変なものを感じ取り、そこから掘り下げていって大きな事件にぶち当たるといったことから大スクープを取ったと言うことが多かったようです。
本書冒頭に書かれている飛鳥涼の覚せい剤中毒事件も、旧知の芸能関係者とのとりとめもない雑談の中から異変を感じ取り、そこから関係者への取材を粘り強く行って突き止めたということです。
週刊文春編集部の記者の定例会議というものは非常に記者にとって厳しいもので、毎週一人5件の新規ネタを報告しなければならず、新人記者にとっては怖ろしく、また憂鬱な時間だそうです。
その中から物になりそうなものはどんどんと掘り下げ、さらに応援の記者が付くこともあります。
裏社会とつながるネタの取材ではかなり危険なこともあるようです。
歌舞伎町などに多数存在するホストクラブでは、以前は金持ちの中年女性が入り浸るというものでしたが、最近では若い女性がハマり込むということが多くなっています。
それもホスト側の戦略が関わっており、中年女性では持ち金が尽きれば終わりとなってしまいますが、若くて美人であれば最後は風俗で稼がせるようになっても金ヅルとできるので、搾り取る額も大きくなるとか。
そのため、来店当初から客のランクも若さと美人度で付けられ、高いカモは徹底的にむしり取るように攻めていくのだそうです。
そういった取材ではホストや暴力団から目を付けられることもあり、危ないこともあったようです。
やはりあれだけの話題を次々と報道する裏には記者たちの活躍があるということでしょう。