日本では行政や企業でのデジタル化の遅れがはなはだしく、デジタル庁まで作って促進としていますが、デジタル先進国のアメリカなどではかえってアナログの復権、逆襲が始まっているようです。
そういった状況について、様々な面から描いていきます。
取り上げられているのは、”モノ”として「レコード」「紙」「フィルム」「ボードゲーム」
そして”発想”として「プリント」「リアル店舗」「仕事」「教育」について語られています。
さらに、デジタル業界の最先端を走るフェイスブック、グーグルなどでもその内部ではアナログ的な発想を活かすような取り組みがされているということです。
1990年代から急降下していったレコードの製造は、2010年には底に達していました。
それでもアメリカで数社だけとなったレコードプレス工場では細々と生産が続けられていたのですが、稼働日は週に2回、1回数千枚程度というものになっていました。
しかしそこから急上昇。2015年には世界で2000万枚のプレスに回復しました。
その復活を支えているのは、10代20代の若者たちが数多く含まれています。
彼らはもちろんかつてのレコード全盛時どころか、CDの時代すら知らない人々です。
しかし音楽のCD化からネット配信化が進むことによって失われたものをレコードは持っているということに気づき、かなり高い価格であってもそれを買うようになりました。
カメラ用のフィルムもデジタルカメラの普及で世界のほとんどのメーカーは生産を取りやめました。
しかしフィルムの感触というものがまたファンを取り戻しています。
デジタルカメラの初期には画質が悪くそれが問題だと思われていましたが、今日ではそれは解消してしまいました。
しかし、実際には別の問題点がありました。
それはデジタル写真は「実在しない」ということです。
フィルムカメラからデジタルに乗り換えた人々はそれまでよりはるかに多くの写真を撮るようになりました。
しかし、それを写真にプリントするということがほとんど無くなってしまいました。
皆ハードディスクなどの記憶装置の中に眠ってしまっていてもう見ることもほとんどありません。
ところがフィルムカメラの場合は撮り終わって現像すれば必ず写真にプリントします。
その存在感はデジタルでは得られないものです。
ネットゲームが多くの人を惹きつけていますが、アメリカの町中にはこのところボードゲームカフェというものが続々と開店しています。
そこでは古くからあるゲーム以外にも新しく作られたボードゲームを楽しむことができます。
ネットゲームはたいてい一人だけで機器に向かい、相手がどこかに居るとしてもその顔も見ることはありません。
しかしボードゲームの場合は対戦者を目前にして会話しながら行っていきます。
そういった人と人との触れ合いというものがアナログの価値ということです。
オンライン販売が普及し始めると、そのうちにリアル店舗などは無くなってしまうだろうと言われていました。
しかし、そのオンライン店舗のほとんどは利益を上げることが難しく赤字経営のところが多くなっています。
IT業界の雄であるアップルが実店舗としてアップルストアを持っているのも象徴的です。
そこで買うということがアップルの顧客にとっては喜びとなります。
オンライン販売というものは価格の競争だけが価値となっています。
そのために黒字化が難しくなっているうえ、消費者にとってはただ価格順に並んでいるだけでそれ以上の情報を得るのが難しいということもあります。
やはり実店舗で店員にお薦めの品物を聞いて買うという行動に、多少高い値段であってもそれを払う価値があると考えるのでしょう。
どうやら、すべてがデジタル化ということにはならないようです。
かと言ってデジタルが無くなるはずもなく、やはり双方が補いながら発展していくのでしょう。