一強体制を確立し個人崇拝まで始めたかのような中国の習近平ですが、本書は新聞記者として中国に駐在し多くの人に取材をしてきた著者が2017年時点でその体制について書いたものです。
著者の中国駐在の最後の時期にすでに習近平を「核心」と呼ぶ、すなわち中国での「個人崇拝体制の開始」という状況になり、そこから現在までさらに強まっているようですが、そこに落とし穴があるのかどうか。
まだ記憶に新しいものですが、習近平が総書記就任の頃には王立軍や薄熙来の失脚といった事件が相次ぎました。
中国共産党指導部の中での熾烈な勢力争いがあったのでしょうが、それは習近平の強力な指導体制確立のための戦いだったのでしょう。
そのような習近平体制はちょうどアメリカのトランプ大統領の時代とも重なりトランプの対中戦略との厳しい戦いともなります。
さらに香港やウイグル、対台湾、尖閣諸島、南シナ海と火種は各地に燃え上がり、また自ら火をつけているようでもあります。
習近平は父親の習仲勲が共産党で指導部にあったものの政変で失脚し、15歳の頃に自分も農村へ追いやられるという経験をしています。
総書記就任の直後にもその村を訪れて農村生活経験をアピールするということをしており、農村の民衆の支持を取り付けるということが大きな意味を持つことのようです。
そのためか、「共同富裕」すなわち先行して富裕化する人々を許すものの、彼らの力で他の遅れた人々を皆富裕にしていくということにこだわりがあるようです。
この本出版の時点の直前には台湾の馬英九とも会談するなどの進展もありましたが、台湾はその後国民党が敗北し蔡英文総統となることで中台関係も後退しました。
香港やウイグルの状況も中国の強硬路線が激しくなる一方です。
本書中にも触れていますが、習近平の個人崇拝が高まると言っても後継者問題はまったく進んでいないようで、その危険性も強いものです。
中国はどこへ行くのか、それは世界がどうなるのかと言うこととも強く関わっています。
折りから、恒大集団の破綻といった問題が持ち上がり、他の企業などへの圧力も強まるのではと言われています。
中国共産党が何をしようとしているのか。
大きな関心が寄せられるのも世界の中での存在感の大きさゆえでしょう。