日本各地には「鉄道絶景」と呼ばれる、非常に美しい風景の中を走る鉄道があります。
有名なものも多いのですが、意外なものやある個人にとって特別な絶景など、様々なものがあるようです。
本書は、「旅と鉄道」という雑誌の編集部が自ら選び、また各鉄道会社に自薦する絶景を紹介してもらうという形で、多くを美しい写真とともに掲載しています。
なお、「鉄道絶景」と言った場合、「車窓から見る風景が絶景である」ものと「風景の中を走る車両の光景が絶景である」ものとがあるように思いますが、それは区別されていないようです。
しかし、本書の中に掲載されている写真はすべて「風景の中の車両」のものであり、「車窓から見る風景」ではありません。
厳密にいえば若干違うような気がしますが、まあ本の構成上の問題でしょう。
表紙のカバー写真は、富山の氷見線雨晴付近から見る立山連峰と海岸を走るディーゼル車。文句なしの絶景でしょう。
裏表紙は一転して江ノ電の鎌倉高校前駅付近の踏切を海岸を背景に通る電車。これも絶景と呼んで構わないものです。
最初にベスト10として次の箇所が紹介されています。
「本四備讃線瀬戸大橋」「釧網本線釧路湿原」「五能線驫木駅」「江ノ島電鉄鎌高前」「東海道新幹線富士川橋梁」「氷見線雨晴」「予土線四万十川」「釧網本線北浜駅」「篠ノ井線姨捨」「只見線第一只見川橋梁」
どこも有名な絶景ポイントで、異論ありません。
その次には「海の絶景」「大地の絶景」として、海岸や山岳地帯の絶景を紹介しています。
これもどこも負けず劣らず、素晴らしい光景が並んでいます。
「鉄道会社が選ぶイチオシ絶景」というコーナーも面白いもので、各社やはり自分の路線は知り尽くしているでしょうから、選りすぐりのものです。
なお、残念なのが「花の絶景」および「川沿いの絶景」の二か所で紹介されているJR九州の肥薩線で、ご承知のように2020年7月の大水害で大きな被害を受けて運休が続いています。
球磨川沿いの路線で非常に美しい風景だったものがその裏に隠された牙で傷つけられたままです。
復活を願うばかりです。