著者の岡村さんは「旅行作家」を名乗っており、あちこちを実際に歩いて作品を書いているそうです。
この本では、東海道五十三次の宿場町の現在の姿を見て歩き、その宿場が登場する時代小説を紹介してその雰囲気を伝えようということをしています。
なお、図書館で見た時にはこの本しか見当たらなかったのですが、どうやら江戸からの前半は別の本になっていたようで、静岡県の舞阪宿から西の京都までの宿場が取り上げられていました。
各宿場で取り上げられている小説は野村胡堂、山本周五郎といった文豪の作品から、多賀隆則、別所真紀子とあまり知らない作家のものまで選ばれていますが、著者の好みで選択したもののようです。
吉田・御油・赤坂といった宿場は現在の豊橋市から豊川市のあたりですが、当時は飯盛り女が多数居たことで有名なところで非常に栄えていたそうです。
旅籠の数がそれぞれ65,62、62と他の地域の宿場と比べても多いようで、少ない方の現在の三重県の石薬師、庄野の15軒と比べるとかなりの差がありそうです。
しかし、明治になり街道がなくなると町も寂れてしまいました。
御油宿で取り上げられている時代小説は、川口松太郎の「新吾十番勝負」
十番のうちの第七番の勝負で傷を負った葵新吾が、養生をしたのが御油宿の旅籠ということでした。
庶民でも旅と言うものが普通になった江戸時代で、それを支えていたのが宿場だったのでしょう。
特に東海道は全国の中でももっとも交通量も多く繁華なものだったのでしょうか。
今となってはかすかに残る雰囲気だけを見るのみでしょう。